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Tuesday, February 11, 2020

「支援制度があること」の周知自体が重要な支援 | もしも大災害で社員が被災したら? - リスク対策.com

もしも大災害で社員が被災したら?

生活再建への「正しい」知識の備え(31)

弁護士・博士(法学) 岡本 正

岡本 正

岡本 正

銀座パートナーズ法律事務所パートナー弁護士。博士(法学)。内閣府上席政策調査員、日弁連災害対策本部嘱託室長、原子力損害賠償紛争解決センター総括主任調査官等を歴任した。東日本大震災を契機に災害復興政策や防災危機管理分野に携わり、4万件を超えるリーガルニーズ分析を踏まえた「災害復興法学」を創設。岩手大学地域防災研究センター客員教授、慶應義塾大学・青山学院大学講師等も務める。BCPの浸透や生活再建の法制度知識の備えの重要性を説き、産学官の防災教育・研修に数多く携わっている。防災冊子『被災後の生活再建のてびき』(東京法規出版)や防災文具『生活のソナエ袋』(銀座嶋屋)などを監修。

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支援に関する法制度の情報が希望につながる

2011年3月11日に発生した「東日本大震災」による巨大津波や福島第一原子力発電所事故によって、筆舌に尽くしがたい甚大な被害が発生しました。

死者・行方不明者は合計2万2000人を超え、全壊住戸だけでも約12万棟に及んでいます。ピーク時は40万人以上が避難生活を余儀なくされていました。そして現在においても、住宅やまちの再建も道半ばです。

私は当時、弁護士ではありましたが、内閣府に出向勤務し、行政改革や国家戦略に関する施策を担当していたところでした。東日本大震災後は、少なからず災害復興政策にも関与しました。同時に、弁護士としても何かできることはないかと考えていたところ、東日本大震災直後から、弁護士らが全国で被災者への無料法律相談・情報提供支援活動を開始していることを知りました。

2011年3月当初、弁護士もまた現場の被災者の声を聞き、少しでも役立つ情報を提供しようと必死になっていました。私は、この膨大な被災者の声を「視覚化」して、記録に残し、広く政策提言に活用すべきではないかと考えました。ひとりの弁護士として日弁連にかけあい、2011年4月から日弁連の災害対策本部室長として相談事例の分析を担うことになりました。

多くの仲間の協力を得て、災害直後からの約1年間で、日弁連や弁護士会を通じて実施した相談のうち4万件を超える相談事例が、順次集約分析され、最終版は「東日本大震災無料法律相談情報分析結果(第5次分析)」としてまとめられました。

岡本正「災害復興法学」(慶應義塾大学出版会)より再構成

図は、東日本大震災における宮城県石巻市の被災者の相談傾向です。亡くなった方が多いこと、全半壊建物が多いこと、都市化されて賃貸借契約が多かったこと、住宅ローンや事業ローンの支払い困難に陥ってしまったこと、そして「何かも失った、いったいどうしたらよいのかわからない、何かできるのか。何か支援はあるのか」という絶望的な声に、少しでも希望を見出すための「罹災証明書」や「被災者生活再建支援金」に関する情報が求められたであろうことが、グラフからうかがえます。

多くの方に、災害後に被災者の生活再建を助ける法制度があること、それを周知することが極めて有効かつ重要な支援になることを、知ってほしいと願っています。

さて、本連載を開始してから1年が経過しました。今回まで32回の連載を重ねてこられたのも、読者の皆様のおかげと、心より感謝を申し上げます。3月には本連載をもとにした書籍が発売されることになりました。タイトルは『被災したあなたを助けるお金とくらしの話』(弘文堂)です。生活再建への「希望」を伝える7カテゴリー、全30話です。書籍の詳細は出版社のウェブサイトをご覧いただければ幸いです。
https://www.koubundou.co.jp/book/b497876.html

(了)

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