少年鑑別所、災害時支援 専門知識生かし心のケア - 日本経済新聞

少年鑑別所は非行少年の審判を開くに当たり、家庭裁判所の求めに応じ、非行の原因を分析している。実務を担うのは心理学や教育に精通した技官たちだ。最近は本来業務にとどまらず、大規模な災害発生時には、現地に入り、専門知識を生かして被災者の心のケアにも当たる。

　東日本大震災の被災地支援について、関係機関と話し合う女性心理技官（右端）（2011年、宮城県内、法務省提供）=共同

所管する法務省の担当者は「鑑別所と地域社会の接点は増えている。今後もできる限り貢献したい」と話している。

2011年3月に起きた東日本大震災。翌4月、宮城県石巻市の避難所で、男性心理技官は小学生たちの輪に入り注意深く様子を見ていた。活発に友達と一緒に遊びながらも、ふと「お母さんが流されたんだ」と漏らす少年がいた。心の傷の深さをうかがわせた。

心理技官は「魔法のようには癒やせないが、できるだけ接して受け止めることを心掛けた」と振り返る。

少年鑑別所の面接は、非行に至った背景を探るため積極的に質問をしながらも、同時に心のケアを意識するという。被災地ではこのケアの経験が役立った。

法務省は11年4月～12年3月、全国から心理技官ら延べ101人を石巻市に派遣した。9日間交代で引き継ぎながら避難所や仮設住宅を巡回した。発生から時間がたつにつれ、アルコール依存症の人も目立つようになり、生活のアドバイスをすることがあった。

現地の看護師や保健師は自らも被災して疲弊しており、別の男性心理技官は「被災者だけでなく、地元医療スタッフの手助けになればと考えていた」と言う。

少年鑑別所の技官による災害時の心理相談は、1995年の阪神大震災がきっかけだった。避難所となった神戸少年鑑別所では2～3週間を過ぎた頃から、避難生活の長期化により心身の不調を訴える人が現れ、相談を始めた。

21年後の2016年に起きた熊本地震では、避難所となった刑務所や学校に、心理技官が出向き相談に乗った。災害ごとに記録を作り、経験の継承もしている。

法務省の担当者は「他の組織と比べても大勢の心理の専門家がいる。分野は違うかもしれないが、少しでも役に立つのなら、今後も被災地に派遣していきたい」と話している。

〔共同〕

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May 07, 2020 at 04:51PM
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