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Tuesday, January 26, 2021

「みなし仮設」主流に 孤立させないサポートを | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞

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 災害時の仮設住宅といえば、かつては建設型のプレハブがほとんどだったが、近年は借り上げ型の「みなし仮設」が主流となってきた。ただ、みなし仮設には、近所付き合いの輪から離れてしまい、生活再建情報などが得にくくなるというリスクもある。自治体など関係機関は、みなし仮設で暮らす被災者の状況を正確に把握し、実態に即した支援を行うための体制を強化するべきだ。

 みなし仮設は被災者が家賃負担ゼロでアパートなどに入る仕組みで、2011年の東日本大震災で初めて本格活用された。内閣府が東日本大震災と、16年の熊本地震以降の主な災害での仮設住宅の内訳を集計した結果、建設型仮設が5万5318戸だったのに対し、みなし仮設は9万8745戸で、全体の64%を占めた。

 みなし仮設の割合を災害別にみると、東日本大震災60%、熊本地震78%、西日本豪雨(18年)86%、台風19号(19年)90%と、年を追うごとに増している。

 みなし仮設には「早期に入居しやすい」「間取りなど各家庭のニーズから選べる」「建設費用がかからない」などの利点がある。

 ただ、被災者が仮住まいをどこにするかは、災害が発生した地域の状況にも左右されるようだ。用地の確保ができず建設型の整備が難しい被災地や、みなし仮設の受け皿となる賃貸住宅が周辺に多い被災地ならば、みなし仮設のニーズが高まる。熊本地震では賃貸住宅が多い熊本都市圏が被災し、建設型の整備に先んじて被災者が賃貸住宅の確保に奔走した。

 一方、18年の北海道地震では、みなし仮設に居住した割合は32%、昨年7月の熊本豪雨では54%だった。いずれも賃貸物件が限られ、建設型で仮住まいを確保する必要性が高かったとみられる。

 今後を見据えれば、みなし仮設になり得る空き室や空き家の情報を被災者に速やかに提供するための仕組みづくりを急ぐべきだ。発生が確実視される首都直下地震では最大94万戸、南海トラフ巨大地震では最大205万戸の仮設住宅が必要で、その多くをみなし仮設で充当することが想定されている。被災者を受け入れる側となるとみられる熊本でも、万全の準備を進めておきたい。

 みなし仮設を巡っては、熊本地震で支援が後手に回ったという苦い教訓も忘れてはなるまい。賃貸住宅での居住は普段と変わりないとして、「特別な支援はしない」との見解が当初、行政内部で公然と語られた。しかし、実際は体育館などへの避難生活が困難な高齢者や障害者、さまざまな事情を抱えた人が身を寄せるなど支援の必要性が高い例は少なくなかった。

 みなし仮設の入居者支援に尽力する高林秀明熊本学園大教授(地域福祉論)は、みなし仮設を巡るさまざまな課題を「社会的な隔離」と表現する。昨年の熊本豪雨でも、780戸のみなし仮設に被災者が入居している。孤立を生まないよう、きめ細かなサポートが欠かせない。

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