2018(平成30)年の北海道地震直後、福島県内企業などの協賛を元に福島民報と北海道新聞に掲載した福島市の詩人和合亮一さん(53)の詩に、北海道の作曲家が曲を付けた。混声合唱組曲「決意のあいだ」として仕上がり、31日に函館の合唱団が現地で初演する。関係者は各地で歌い継がれ、共感の輪が広がるよう願う。
組曲は「決意のあいだ」「揺れ」「祈り」「牛と」の4曲から成る。北海道教育大名誉教授の作曲家佐々木茂さん(75)=函館市=が、函館MB混声合唱団の委嘱を受けて作った。
歌詞は和合さんの詩をそのまま採用した。〈手をつなぎませんか〉、〈分かち合いませんか〉…。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故で苦しむ本県から発せられたメッセージに佐々木さんが共感した。「詩自体が音楽と言えるくらい言葉が力を持っている。歌詞が伝わるよう曲を書いた」と話す。
佐々木さんは1993年の北海道南西沖地震で被災した奥尻島民のためレクイエムを作っており、一部に共通するメロディーを使った。当日は午後2時から、函館市民会館で約50人の団員が、鎮魂の思いと未来への希望を歌に託す。
当初は昨年秋の初演を予定していたが新型コロナウイルス感染拡大で1年延期していた。合唱団の理事長小野紀子さん(65)=函館市=は「地震やコロナに負けず、力を合わせて前へ進む気持ちを込めたい」とする。将来的には地震の被害が特に大きかった厚真町へ出向き、歌うことも考えている。
詩は、地震から1カ月後の2018年10月7日付に福島民報と北海道新聞に掲載された。県内を中心に44企業・団体が協賛した。被災地を思う心に感動したという北海道民の声が両紙に寄せられた。
◇ ◇
詩を作った和合さんは「福島と北海道は手と心を携えることができる」と語る。
地震から間もない時期に詩を編んだ。余震が続く報道を見聞きしながら、被害が進行形であることにこだわった。「傷ついた心は歌うことで形にできる。歌はその場にいる人と思いを一つにする現場性の力がある。曲が全国へ広まり、思いを分かち合っていければいい」と願っている。
◇ ◇
「決意のあいだ」
揺れている
その間
山が崩れた
その間
家々が倒された
その間
震えながら人々が
列をなした
その間
夜の深さに沈黙した
その間
どうか静まっておくれ
祈った
その間
土砂が流れ
家々が失われ
人々は行方不明に
どんな理由があって
奪われなくては
いけなかったのか
暮らしの風景を
北の空はどこまでも
果てのない悲しみと
悔しさのようになった
それでも翌日も
未明から
青く広がった
その間
人々は
あらゆる
「その間」を
生き抜いて
唇を噛んで
固く手を握り合うようにして
電気の点かない夜を超えた
ここで
北海道で
子どもたちを育てる
人々は
決意して
翌朝の雲を見あげたのだ
涙があふれてきて
その間
それでも
さきに
心に
灯りが
点いて
「揺れ」
たった
一人では
本当に
か弱い
この世界は
あまりにも
広すぎる
だから
手を
つなぎませんか
そうして
生きて
いきませんか
わたしもまた
悲しくて
いつも
手探りしています
あなたと
同じなのです
分かち合いませんか
大地よ
静まれ
どうか
祈りを
涙を
分かち合いませんか
「祈り」
暗闇のなか
心のおくに
スプーンがあって
分け合いたい
何を
涙を
怒りを
絶望を
悲しみを
沈黙を
静けさを
そして
祈りを
優しさを
ひとさじ
灯りを
「牛と」
北の大地に
穴を掘り
泣きながら
牛の乳を捨てた人よ
その土には
豊かなミルクと涙が
注がれた
それでも まだ
しぼらなければ
ならない
あなたの悲しみ
悔しさは
空しく流れ込む
白い乳の全てが
知っている
人の死と
絶望を受けて
あなたは力の限り
手に込める
強く
しぼる
唇をかみしめて
大地よ 空よ
故郷よ 胆振よ
北海道よ
それでも
私は
牛と共に
生きる
涙を
しぼる
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