31日投開票の衆院選は東日本大震災から10年を迎えて初めて行われる。津波、東京電力福島第1原発事故の被災地では街並みの整備が進む一方、住民の帰還は進まず、将来への不安を訴える被災者も多い。被災地と政治の間にある「温度差」。いまだに故郷を離れて暮らす被災者からは「一度現地を見てほしい」という切実な声が聞こえてくる。(内田優作、写真も)
福島県双葉町は原発事故で全町民が避難を余儀なくされ、来年の居住再開を目指している。町は震災直後に町民が集団で避難し、現在も約400人が生活する埼玉県加須市に福島県外で唯一の臨時投票所を設置。24日にも県外に避難している町民が期日前投票に訪れていた。
「ここまで遠かった。車で3時間かかりましたよ」と語るのは東京都新宿区に住む自営業の男性(43)。
「新型コロナウイルス禍などで福島への関心が薄れているのではないかと感じる。復興を進めてほしい」との思いを一票に込めた。
投票所には「加須市の施設に入っているため控えている」(双葉町選管)と、双葉町が属する福島5区の立候補者のポスター掲示板はない。投開票日当日は午後5時で投票が締め切られ、約200キロ離れた同町いわき事務所(福島県いわき市)まで職員が投票箱を運び、開票する。
震災から10年がたったいまも、被災者の暮らしはまだまだ元通りにはなっていない。
国は双葉町について指定した「特定復興再生拠点区域」から先行して住民の帰還を進める予定だが、拠点から外れた帰還困難区域に関しては「2020年代」の避難指示解除を計画、地域の除染についても希望者がいるところだけを対象とする方針だ。加須市で生活する女性(69)は「私は拠点外で帰る家がない。福島に帰るという人を見ると、心がざわざわする」と打ち明ける。
被災者は政治が復興に真摯(しんし)に向き合っているかを見極めようとしている。
「双葉町埼玉自治会」会長の吉田俊秀さん(73)は帰還困難区域の整備について、「ライフラインや医療機関を整備し、働く場所がなければ特に若い人は帰らない」と指摘。「政治家と被災地に温度差があるのではないか」と危ぶむ。
「被災地は整備されたきれいなところばかり目を向けられているのではないか」との思いもぬぐえない。吉田さんが挙げるのは、この夏に行われた東京五輪での聖火リレーだ。双葉町のコースについて、町は当初、避難指示が解除されていない町道も一部として示したが、結果的にJR双葉駅周辺を周回するだけになった。招待されたものの、吉田さんは欠席した。
11月下旬には自治会メンバーと故郷・双葉を訪ねることを楽しみにしている吉田さん。
「百聞は一見にしかずだ。政治家は福島の帰還困難区域を見て、現状を知ってほしい」と語った。
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