
台風19号による豪雨で長野県の千曲川の堤防が決壊してから、13日で2年です。
大きな被害を受けた長野市の長沼地区では、住民たちが求めていた災害公営住宅の建設が見送られ、地元を離れざるをえない被災者も出ています。
おととしの台風19号で、長野県内では長野市内の千曲川を含む6つの河川で堤防が決壊し、災害関連死も含め23人が死亡しました。
6900棟余りの住宅が被害を受け、長野県によりますと、仮設住宅や民間の賃貸住宅を活用したいわゆる「みなし仮設」などでの生活を余儀なくされている被災者は、今月1日の時点で394世帯、918人に上っています。
決壊した千曲川の堤防の近くにある長野市の長沼地区では、住民らが災害公営住宅を地区内に建設するよう求めてきましたが、市は今月6日、建設を見送ると発表しました。
見送った理由については、地区が浸水想定区域内で十分な安全確保が難しく、盛り土を行った場合は住宅が高い場所になり、高齢者などには不便な生活になるおそれがあるなどと説明しています。
また、隣の地区に建設中の災害公営住宅があり、長沼地区の希望者はそこに入居することが可能だとしています。
これに対して住民側は「避難情報が出る前に住民が取るべき避難行動を定め、災害時に逃げ遅れる人がいないよう対策を取っている。災害公営住宅の建設は可能だ」などと反論しています。
建設が見送られたことで、地元を離れざるをえない被災者が出ているということです。
【災害公営住宅とは】
「災害公営住宅」は、災害で自宅が被害を受けて、経済的な事情などで自力で住まいを再建したり民間賃貸に入居したりすることが難しい人のために、自治体が国の補助を受けて県や市町村が整備する住宅です。
比較的安い家賃で被災者に貸す賃貸住宅で、復興住宅とも言われています。
災害公営住宅は1戸からでも建設することが可能で、県内では、おととしの台風19号に関連した災害公営住宅が、長沼地区の隣の地区に2棟、あわせて73戸が建設されていて、完成は来月を予定しています。
今回、長野市が長沼地区での災害公営住宅の建設を見送ったことについて、国土交通省は「現地の状況からどこに何戸整備すべきかは自治体が決めることで、その判断だと受け止める。国土交通省への報告の義務はないが、さまざまな選択肢の中で、一度建設を検討していたものを見送るということはありうる」としています。
【長沼地区の被災者「市に振り回され、前に進めなかった」】
長野市が長沼地区での災害公営住宅の建設を見送る判断を示すまでに1年余りかかったことについて、被災者の1人は「市に振り回され、家を決められず、前に進めなかった」と悔しさをにじませています。
長沼地区での災害公営住宅の建設をめぐっては、去年9月に住民が市に対して建設の希望を申し出て話し合いが続いてきましたが、市は今月6日、最終的に建設を見送ると発表しました。
地区に30年余りにわたって暮らしていた小滝浩子さん(61)は、自宅がおよそ2メートル浸水しました。
損傷が激しかった自宅を解体し、現在は賃貸住宅を活用したいわゆる「みなし仮設」での避難生活を余儀なくされています。
収入の大半を亡くなった夫の遺族年金に頼っていて、自力での自宅の再建は難しく、地区内に災害公営住宅が建設されることを望んできました。
しかし、希望はかなわず、隣の地区に建設中の災害公営住宅への入居を申し込み、愛着のある地区から離れざるをえない状況になっています。
小滝さんは「新たな場所で、いちから人間関係をつくるのは大きな負担です。長沼地区には親類がいて、地域とのつながりもあり、長沼に戻りたかったです」と落胆した様子で話しました。
そして、市が判断するまで1年以上もかかったことについて「建設してもらえるかもと期待したり、ダメかと落ち込んだり、市に振り回され続けました。この間、家を決められず、前に進めませんでした。建設しないなら、もっと早く結論を出してほしかったです」と悔しさをにじませていました。
【専門家「合意形成ないまま結論出すのは早すぎる」】
災害復興に詳しい兵庫県立大学の室崎益輝教授は、災害公営住宅について、「建設しても維持が大変なので、なるべくつくらないという流れになっている」と指摘します。
その一方で、長沼地区での建設見送りの理由を浸水のおそれがある区域などとしていることについて、「南海トラフの浸水危険地域に災害公営住宅を建設しているところもあり、東日本大震災の被災地では、山の上にあるところもある。エレベーターなどを備えれば高齢者でも生活できる」と述べました。
そのうえで、災害公営住宅の建設を決めるうえで最も重視すべきことについては、「被災者がしっかり納得するかにかかっている。合意形成をしないまま行政だけの思いで災害公営住宅の建設場所や戸数を決めてしまうと、さまざまな問題が起きてくる。納得してもらっていないのに建設しないと結論を出すのは早すぎる」と話しています。
からの記事と詳細 ( 長野 千曲川堤防決壊から2年 地元離れざるをえない被災者も|NHK 首都圏のニュース - NHK NEWS WEB )
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