静岡放送(SBS)
熱海市の老舗写真館では、過去にスタジオで撮影をしたことのある被災者に思い出の写真を復元し、無償での提供を始めました。写真は新たな生活に一歩踏み出す被災者の背中を押しています。 伊豆山の岸谷地区で住宅が全壊する被害を受けた40代の男性です。被災後は県が用意した仮の住宅で生活しています。 ＜土石流被害を受けた男性＞「お宮参りの時に撮った写真ですね」 写真に加え、デザインが整えられた、このアルバム。7月の土石流で住宅と共に流され、一度は失われましたが元通り、復元されました。 ＜土石流被害を受けた男性＞「（スタジオしゃらくが）自分たちの家族の写真がないっていうのを分かってくれてて、すぐにやってくれてたっていうのはうれしかったですね」 このアルバムを復元したのは、熱海市清水町で創業50年を迎える老舗の写真館です。この写真館では、先月から土石流の被災者に対して、写真の復元を無償で行っています。 ＜スタジオしゃらく 鈴木信太郎代表＞「スタジオで撮って、残してくださったお客様の写真が土石流で流されてしまった。そのお客様に無償で写真の作り直しをしようとはじめました」 スタジオしゃらくでは、過去10年間の撮影データを保管しています。撮影時に登録した名前や注文内容を基に復元するのです。 ＜スタジオしゃらく 鈴木信太郎代表＞「仲間のカメラマンが東日本大震災で被災をして、命拾いした経験をして」 2011年、東日本をおそった大津波。岩手県で写真館を営む仲間が経験し、学んだのは被災者の思い出をよみがえらせる写真の重要性でした。 ＜スタジオしゃらく 鈴木信太郎代表＞「5年、10年とたてば、ピンぼけした写真でも、その一枚を見ただけで、思い出がよみがえってくるんです。（被災者の）心のエネルギーに写真が役に立てればいいなと思っています」 鈴木さんは熱海市の消防団としても活動をしています。 ＜スタジオしゃらく 鈴木信太郎代表＞「寝っ転がっている車や流された車があった」 しかし、被害が大きく危険なため、消防団として現場に近づくことはできませんでした。 ＜スタジオしゃらく 鈴木信太郎代表＞「何もできなくて、ただ現場にいるっていう時間がただ過ぎていく。写真スタジオとしてやれることはある。それはわかっていて、時期が来たらやろうと」 いつ何をすれば、被災者の力になれるか、生活が落ち着き始めた10月、写真の復元を始めました。こちらの男性は土石流のあと、流されたいくつかの写真が見つかったといいます。しかし、そこには、深い爪痕が。きれいに復元されたアルバムは、前を向くきっかけをくれたといいます。 ＜写真を復元してもらった男性＞「立ち止まってしまったり、後ろを向く時が多々ある。大きくなってくると、昔の可愛さがなくなったなって思うことがある。小さい時の思い出を思い出せるだけでも前を向ける気がします」 被災者にどう寄り添えばいいのか、老舗写真館は思い出の写真をよみがえらせることで復興へのエールを送ります。
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