2022年02月27日07時18分
東日本大震災の際、避難所などに行かず自宅で生活を続けた「在宅被災者」は、11年たつ今も、修繕が終わらないなどの苦難に直面する。支援団体や専門家が連携して個別に被災状況を把握し、改善につなげる「災害ケースマネジメント」と呼ばれる新たな試みが成果を挙げており、次の災害に備え制度化を求める声も高まっている。
宮城県石巻市では、2011年3月下旬時点で約6万1000人が、避難所に入れないなどの理由で、自宅などで生活していた。同市の一般社団法人「チーム王冠」代表の伊藤健哉さん(55)は地震直後、約9000人の在宅被災者へ食料などを支援。その過程で、複雑な支援制度を活用できず思うように生活再建が進まない実態を知った。
当時の国の制度では、全壊や大規模半壊の家屋には修繕費用などとして100万~300万円が支援され、半壊世帯はトイレなど最低限の部分を直すため約52万円が支給された。しかし、資金が足りず壊れたままの家に住み続ける人や、市独自の補助を知らない人もいたという。
「支援からこぼれ落ちた人を誰も助けないのか」と感じ、11年11月から医療関係者と共に戸別訪問を始めた。住宅の損傷程度や健康状態などを丁寧に聞き取り、弁護士や建築士らと連携して解決に当たった。今も100件ほど支援を続ける。
市内に住む佐藤悦一郎さん(77)もその一人。1階が津波で浸水した自宅は大規模半壊と認定され、支援金や貯金計約300万円で修理する道を選んだ。しかし、資金が底を突き、台所床下に入り込んだ泥が残ったままだ。
チーム王冠が訪れた時、佐藤さんは月約7万円の年金に頼る生活。震災によるけがなどで医療費が膨らみ食費を切り詰めていた。伊藤さんは弁護士を紹介し、医療費の負担を役所に説明することで、生活保護申請にこぎ着けた。現在も日常の相談に乗っており、佐藤さんは「問題を一つ一つ解決してもらいありがたい。命の恩人だ」と話す。
伊藤さんらは、こうした災害ケースマネジメントの制度化を国に訴えている。国は3月末までに全国で同様の取り組み状況を調査し、課題などを探る方針。活動に携わる仙台弁護士会の宇都彰浩弁護士は「南海トラフ地震などに備えるためにも国は法制化を急ぐべきだ」と指摘している。
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