静岡県熱海市で起きた土石流をめぐり、犠牲者の遺族や被災者などが、崩落の起点にあった盛り土が造成された当時の土地の所有者や、今の所有者などに対して賠償を求めている裁判が始まり、被告側はいずれも争う姿勢を示しました。
去年7月に熱海市で起きた土石流の犠牲者の遺族や行方不明者の家族、それに被災者のあわせて84人は、崩落の起点にあった盛り土が造成された当時の土地の所有者や、今の所有者などに対して、58億円余りの賠償を求める訴えを起こしました。
18日静岡地方裁判所沼津支部で裁判が始まり、原告側は「盛り土が崩れて危険が生じることを認識していたのに、崩落を防ぐための工事を行わなかった」などと主張しました。
また、「被害者の会」の会長で、母親を亡くした瀬下雄史さんが意見陳述し、「違法な盛り土による土石流は遺族には癒えない悲しみを、被災者には生活再建という理不尽な苦しみを与えた。悪質な行為による人災だ」と涙ぐみながら訴えました。
一方、元所有者側は出廷せず、提出した答弁書で訴えを退けるよう求めました。
また、今の所有者側は「購入した土地に盛り土があったことは知らず、崩れる危険性があるという認識は一切なかった」として、訴えを退けるよう求めました。
裁判は今後、盛り土が大規模に崩れて被害が出ることを予測できたかどうかが最大の争点になる見通しです。
裁判のあと、原告の代表と弁護団が沼津市内で会見を開きました。
このなかで、遺族や被災者でつくる「被害者の会」の会長で、亡くなった瀬下陽子さんの長男の瀬下雄史さん(54)は「土石流の発災から10か月以上たちましたが、母に対する悔しい思いはいまも変わっておらず、一日に何回も遺影に話しかけています。今回の裁判を通して土石流が発生した原因を究明し責任を追及していきたい」と話していました。
また、弁護団長を務める加藤博太郎弁護士は「これまでの土地の元所有者や今の所有者などの発言を聞いていると内容が矛盾していて、誰かがうそをついていると思う。真相の解明を裁判所に求めていきたい」と話していました。
崩落の起点にあった盛り土が造成された当時の土地の所有者は、NHKの取材に対し、「自分は土地を貸した名義人であり、実際に盛り土を造成したのは別の業者だった。盛り土に危険性があるとは思っておらず、土石流が起きることは予測できなかった」と主張しました。
そのうえで、「責任の有無については被害者の感情もあり、いまここで自分が語ることはできない。司法の判断はしっかりと受け止めたい」と話していました。
盛り土を含む土地の今の所有者の代理人の河合弘之弁護士は、裁判のあと会見を開き、「所有者は買う時に盛り土があることを知らず、危険だということも知らない。このため安全工事をしなければならないという認識もなかった。今の土地所有者になぜ責任があるのでしょうか。一番責任があるのは盛り土を造った前の土地所有者だ」と述べ、法的責任はないと主張しました。
また、河合弁護士は、静岡県の第三者委員会が盛り土の造成工事に対する当時の県と熱海市の対応を検証した結果、「失敗だった」と総括する最終報告書をまとめたことなどを受けて、県と熱海市、それに熱海市の斉藤栄市長に対して裁判に参加する機会を与える「訴訟告知」の手続きを行ったことを明らかにしました。
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