岡山県倉敷市真備町で2018年の西日本豪雨後、被災者の心のケアのため「クリニカルアート(臨床美術)」による支援に取り組んだ有志の会が11月末、4年ぶりに町内を訪れた。コロナ禍で途絶えていた交流だが、参加したお年寄りらは工作を楽しみながら再会を喜んだ。会は解散するが「つながりは変わらない」。
11月30日、同市真備町辻田の「ぶどうの家ブランチ」。被災倉庫を再建して開設したコミュニティー施設に、お年寄りや近くの保育園児らが集まった。一同が取り組んだのはワイヤーと和紙で作る「カラフルきのこ」の制作。「赤に黄は映えるなぁ」「ええのができた」「肉厚でおいしそうだ」。会場は笑顔であふれた。
被災者支援に取り組んできたのは「クリニカルアートまびの会」。NPO法人日本臨床美術協会が認定する臨床美術士の辻香乃さん(63)=神戸市=ら8人が18年12月に設立した。法人からの特命で被災間もない真備で支援先を探していた際、ぶどうの家の津田由起子代表(59)と出会い、活動が始まった。
見るだけではなく、触覚や嗅覚(きゅうかく)など五感を刺激して創作とコミュニケーションを楽しむクリニカルアート。認知症対策など脳を活性化させる効果があるとされる。
辻さんらは19年は毎月、ワークショップを開催。描いたり作ったりを楽しんでもらうことで、被災後の喪失感や孤独に苦しむお年寄りらに穏やかな時間を提供してきた。同年末には天満屋倉敷店で作品展も開催した。20年以降も年1回は訪れる予定だった。
しかしコロナ禍で活動は中断。その間にメンバーにも出産や体調悪化などの事情が重なり、継続は難しくなった。一方で、クラウドファンディングによる寄付金で購入した画材が残っていた。「できるだけ真備に還元しよう」。辻さんらは、もう一度訪問してから解散しようという思いに至った。
会場からは再会の喜びと会をねぎらう声が聞かれた。日野せつ子さん(76)は4年前も参加したことを覚えている。「待ち遠しかった。解散は残念だけどきょうも楽しかった。ありがとう」。津田さんは「真備を忘れずにいてくれたことが励みになる。きっとまた来てくれる」と期待する。
辻さんはこんなあいさつで会を締めた。「『次はいつ来るの』という言葉に励まされての活動で、最後にみなさんの顔を見たくて来ました。またフラッと現れるかもしれないので、歓迎してください」。大きな拍手に包まれた。(小沢邦男)
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