「なにしとるんや! 火事場泥棒!」。5日午前8時半ごろ、石川県輪島市の店舗の駐車場に、怪しげな若い男性が現れた。「支援物資を持って来た」と言うが、本人は手ぶらだ。駐車場で車中泊をしていた女性が不審に感じて後を付けていくと、被災者宅からミカンが入った箱を持った別の若い男性が出てきた。「動くな!」。近所の被災者ら数人で取り囲んだ。偶然通りかかった大阪府警の支援車両を呼び止め、助けを求めた。
石川県警は同日、市内の70代男性の自宅に侵入して高級ミカン6個を盗んだとして、自称、愛知県刈谷市の男子大学生(21)を窃盗と住居侵入の疑いで現行犯逮捕した。自らをボランティアと語っているという。取り押さえた近所の男性は「被災してみんなが寄り添って暮らしている時に物をとるなんておかしいんじゃないか。本当に許せない」と憤る。
能登半島地震の被災地では留守宅を狙った窃盗や、詐欺まがいの事案が確認されている。被災者らが震災に便乗した犯罪に巻き込まれる可能性があるとして、警察庁や国民生活センターが注意を呼びかけている。
警察庁が2016年に発表した資料によると、11年の東日本大震災直後、空き巣やコンビニの現金自動受払機(ATM)を狙った窃盗が相次いだ。東京電力福島第1原発周辺では、空き巣が大幅に増加し、避難指示区域を管轄する福島県警双葉、南相馬の両警察署では16年2月末までに約1600件が確認された。さらに、震災に便乗した詐欺は震災発生から5年間で204件が確認され、被害額は約19億円に上った。
国民生活センターによると、災害時には悪質商法が多発する傾向にある。「屋根にビニールシートをかけられ高額な作業料金を提示された」「市役所の者だと名乗る人物が自宅に来て義援金を求められた」といったケースが報告されているという。
毎日新聞の取材では、能登半島地震を巡り、富山県高岡市の住民が「国から要請を受けて来た。1メートル1000円でブルーシートを販売している」などと男2人組に声をかけられたほか、新潟市で県外ナンバーの車に乗った男女に「汚泥処理をする」と持ちかけられた女性が、処理後に当初提示された値段の約5倍の金額を請求された事案が起きている。
警察庁はX(ツイッター)で「震災に便乗した悪質事犯に注意。怪しいと思ったら警察にご相談ください」などと呼びかけている。【井手千夏、戸田紗友莉】
からの記事と詳細 ( 被災者が取り押さえたミカン泥棒 能登地震に乗じた犯罪に注意 - 毎日新聞 )
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