能登半島地震の発生から1カ月半。石川県内で設置された私設の「自主避難所」の存続を巡り、被災者と行政の間で考え方の違いが生まれている。気心の知れた住民がいる自主避難所で過ごしたいと願う被災者がいる一方、避難者の把握や支援に当たる自治体は市町が開設した「指定避難所」に移ってほしい意向だ。
発生翌日の1月2日に開設して以降、住民同士が支え合う「共助」の力で避難生活を工夫してきた。電気が復旧した同29日まではランタンを使った。各家庭から食材を持ち寄り、山からの湧き水を利用。元々LPガスを使う地域で、震災後もそのまま使え、石油ストーブやくみ取り式トイレもあった。2月上旬まで過ごした地元の神社の宮司、亀山国彦さん(64)は「電気以外は全てあった」と話す。
2キロ離れたところに指定避難所があるが、集会所に避難する女性(69)は「ここは家が近いし、地域のみんながいる」と安心感を覚えている。
能登半島北部では指定避難所よりも自主避難所が多い自治体が目立つ。特に輪島市は40、珠洲市は27、能登町は26に上る。
輪島市は「いずれ市外からの応援が縮小した時、これだけの自主避難所があると、効率的な避難所運営ができなくなる」として、自主避難所の住民を指定避難所に移すことを検討している。珠洲市の泉谷満寿裕市長も物資の配送や、給水支援の面から「無理やりではないが、少しでも数を減らすことが必要と思う」と話している。
これに対し、自主避難所に身を寄せる住民は不満や不安の声を上げる。
珠洲市上戸町の自主避難所で過ごす40代のパート女性は「何もないところからみんなで作り上げた避難所。今さら寒い体育館には行きたくない」と言う。1月2日の開設以降、物資集めや避難者への対応は、女性を含む運営責任者ら数人の力で乗り切ってきた。近くの指定避難所の小学校体育館には3倍以上の避難者が身を寄せ、男性会社員(54)は「感染症も心配だ」と訴える。
輪島市三井町のビニールハウスで自主避難する大根忠さん(78)は「移動は体にも負担がかかる。慣れた場所を離れ、指定避難所に行こうという気持ちにはならないよ」と不安がった。
行政は個別事情を丁寧に聞き取って
兵庫県立大の木村玲欧(れお)教授(防災学)の話 新潟中越地震でも中山間地で多くの自主避難所が作られた。中山間地は指定避難所が少なく集落のまとまりが強いので、住民同士の顔が見える自主避難所が安心しやすい。一方、物資や行政の情報が届きにくい。被災者一人一人のニーズに合ったきめ細かな支援情報が手に入らないと、生活再建が遅れる恐れがある。ただ、被災者を無理やり移動させると、環境の変化に適応できず体調不良につながりかねない。自治体は個別の事情を丁寧に聞き取って慎重に対応してほしい。
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