北陸新幹線の金沢―敦賀(福井県敦賀市)間が16日に延伸開業する。新幹線が通っていなかった福井県内では一気に4駅が誕生し、「100年に1度のチャンス」と歓迎ムードに沸く。一方、2駅が新設される石川県内では、能登半島地震の被災者を受け入れているホテルや旅館も多い。同県北部の被災地では観光客を迎え入れる態勢にほど遠く、観光振興の恩恵にあずかれるか疑問の声も出ている。
「100年に1度のチャンス」
北陸新幹線の終着地となる敦賀駅。敦賀市内では開業を喜ぶポスターなどでお祭りムードだ。駅前で土産物店を営む、同駅前商店街振興組合の河藤正樹理事長は「少子高齢化、地方衰退の時代にこれだけの起爆剤が来るのだから、好循環の始まりにしないと」。近くで「カメレオン食堂」を営む鈴木洋さん(51)も「敦賀には閉鎖的なところもあるが、外から来る人を意識することで街が変わればいい」と表情は明るい。
福井駅が誕生する福井市でも期待は膨らむ。福井商工会議所の寺川直輝・地域振興部長は「外から入ってくる新しい人、新しい知恵との融合に期待したい。(金沢、富山と)北陸3県の県都が乗り換えなしで結ばれるので、北陸という単位でのプロモーションもしやすくなる」と将来を見据える。
恩恵は県民生活にも及ぶ。東京へ向かう利便性は格段に高まり、福井―東京間は30分以上短縮されて最短2時間51分で結ばれる。これまでは金沢駅まで北上して北陸新幹線を使うか、逆方向の米原駅(滋賀県米原市)経由で東海道新幹線に乗るかだったが、開業後は乗り換えも不要に。数カ月に1度、東京方面に出張するという福井市内の食品会社で働く男性(47)は「乗り換えを気にせず東京に行けるのは助かる。首都圏で新たな取引先を開拓したい」と意気込む。
「加賀が観光引っ張る」
一方、小松、加賀温泉の2駅が開業する石川県。同県加賀市の山代、山中、片山津の加賀温泉郷では、2次避難先として被災者を受け入れながら観光客を迎える旅館も多い。山代温泉で土産物店を営む桶谷孝士さん(59)は地震後に観光客は減ったと指摘。「県外の方が来ないと寂れる一方。開業は新型コロナウイルス禍と地震で打撃を受けた観光地の起爆剤になる」と希望を託す。旅館経営者などでつくる「加賀温泉郷協議会」の和田守弘会長(53)は「能登の復興は時間がかかるので、我々が石川の観光を引っ張るつもりだ」と語る。
新潟を含めた北陸4県では、開業日から政府による被災地の観光振興支援「北陸応援割」も始まる。1人1泊当たり最大2万円を補助するが、あり方を巡ってはさまざまな意見が噴出。石川県の旅館経営者の一人は「大幅な割引を1カ月ほどの限定でやるより、少額でもいいから1、2年の長い期間で助成する制度がよかった。旅行の目的が北陸の応援か、安く泊まれるからなのか分からない」と首をかしげる。
能登半島ではインフラが全面復旧しておらず、石川県七尾市の和倉温泉では3月上旬でも断水が続く。旅館「花ごよみ」は応援割での宿泊が可能か常連客に聞かれたが、故障したボイラーの修理が間に合わない。おかみの北村良子さん(65)は「本来ならお客さんがどんどん来る時期なだけに、もどかしい。(開業や応援割に)我々は蚊帳の外というのが正直な気持ち。でも観光客に来てもらわんことには石川が元気にならない。被災者を受け入れてくれている旅館がうるおうのは良いこと」と話した。【国本ようこ、高橋隆輔】
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