能登半島地震で被災し、自分で見つけた「みなし仮設」に入りました。今のところ家賃を立て替えていますが、いつごろ支払われるのでしょうか。(複数の被災者)
3155世帯利用 石川県内自治体、手続き遅れ
能登半島地震で避難し「みなし仮設住宅」で暮らす被災者から、本紙の「Your Scoop(ユースク)~みんなの取材班」に切なる声が届いた。石川県によると、本来は市町が負担する家賃を被災者が立て替えている事例が7割超に上ることが判明。避難先で始まった新生活で出費を余儀なくされる被災者からは、早期の支払いを望む声が上がる。(奥田哲平、広田和也、西浦梓司、西村理紗)同県輪島市で被災した湊口由起美さん(56)は金沢市に避難し、2月上旬に家賃5万9千円の1LDKのアパートに入居。契約する際に家賃2カ月分や礼金などで三十数万円を払い、4月分も家賃を立て替えた。「子どもの教育費もあり、すぐに動かせるお金を用意するのが難しい。これなら2次避難先のホテルにいた方が良かったのかも」とこぼす。
みなし仮設は、自治体が民間の賃貸住宅を借り上げ、被災者が最長2年住める制度。「住宅の被害認定調査で半壊以上」「ライフラインが途絶し、長期間居住できないと市町が認める人」などが対象だ。富山、福井、新潟各県に避難した人を含め、15日時点で石川県内の被災者3155世帯が利用する。
本来の入居手順は、入居を希望する被災者が住民票のある市町に申請した後に県が書類を審査し、県から決定通知が出たら、被災者と市町、物件の貸主の3者で賃貸契約を結んでから入居する。ただ、広域避難が呼びかけられた能登半島地震では、罹災(りさい)証明書が発行される前に被災者がいち早く自分で物件を探して入居を始めた事例が多い。
その場合は、一般的な民間賃貸と同じように貸主と入居者の2者契約になるが、後からさかのぼっての手続きも可能。罹災証明書などを提出した上で「みなし仮設」として3者契約に切り替え、被災者がそれまで支払った家賃や礼金なども返金されるはずだった。
だが、3者契約の事務作業が遅れている。県が10日時点で集計した約2100世帯のうち、73%が2者契約のままだった。
輪島市の自宅が全壊し、1月下旬から金沢市内のアパートに暮らす70代の高齢者夫婦は、2月21日に3者契約のための書類を避難先の金沢市役所に提出した。だが、何の連絡もなく、家賃の支払いが続く。
さらに3者契約書がないため、公費で支援対象となる家電製品(テレビ、冷蔵庫、洗濯機)の購入費(上限13万円)の申請もできない状態だという。「リタイアした私たちは年金があり、少しの蓄えがある。若い人は仕事を失い、子どもの教育費もある。早く返金してあげてほしい」と望む。
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