【都江堰(中国四川省)=田村美穂】四川大地震から12日で16年となる現場を訪れた。復興の陰で、政府の責任を追及し補償を求めてきた被災者に対する当局の嫌がらせや差別待遇が続いていた。
恩恵
中国共産党や当局の指導で被災地の復興は進んだ。都江堰や●川県の国内総生産(GDP)はいずれも3~4倍に増え、同県への旅行者は約150倍に増えた。都江堰には新しい商店が立ち並び、大型観光バスが行き交っていた。(●はさんずいに「文」)
しかし、復興の恩恵を受ける対象から除外された被災者たちがいた。成都市近郊の都江堰にあった新建小学校や
国営新華社通信などによると四川省は、被災者に臨時の生活補助金として1人毎日10元(約215円)を3か月間支給し、死亡者1人につき5000元(約10万7800円)を遺族に送った。住宅の提供を受けた被災者もいた。
しかし、この保護者らは今まで十分な補償を受けられていない人が多い。倒壊した校舎の手抜き工事を指摘し、地元政府に対して抗議や提訴に向けた動きを繰り返してきたことが理由だ。畑として利用していた土地に復興住宅が建設され、自給自足もできなくなった。
窮状
保護者ら約300人は3月、震災後に生まれた子の教育費免除などを四川省政府に訴えた。
「地震で学校が崩壊し、唯一の子供を失った。被災後、新たに子供を産み育て始めた。国の一人っ子政策を順守した結果、高齢での再出産、育児となった。経済的に困窮し、精神的負担も大きい。政府に責任を取ってほしい」
当局に提出した文書で窮状を訴えた。
聚源中学校で長男(当時15歳)を亡くした女性(55)は「定職がなく子供はまだ幼い。生活が不安定で育て上げる自信がない」と涙ながらに語った。夫は長男を失った悲しみでうつ病を患い仕事ができない。被災後に生まれた長女(15)、次女(12)は幼く、女性が工事現場の仕事などで養う。「最近は高齢で仕事も簡単にみつからない」と生活不安を訴えた。
監視
遺族らは近年、事故や病気で子供を失った全国の保護者と連帯している。他地域の政策と比較して「なぜ四川はできないのか」と地元政府に詰め寄るためだ。中央政府への働きかけも進めている。
しかし、こうした動きを強めれば強めるほど地元当局から社会の安定を揺るがす集団とみなされ、年々監視を強められている。特に発生日の5月12日前後は締め付けが厳しく、集団での墓参もままならない。
昨夏、
遺族への当局による理不尽な対応は、四川大地震にとどまらない。
新型コロナへの感染が原因で2020年2月、湖北省武漢市の父を亡くした張海さんは、感染拡大を招いた地元当局の責任を追及すると当局から尾行や軟禁といった嫌がらせを受け、23年3月には、別件の騒動挑発容疑で逮捕された。
◆ 四川大地震 =2008年5月12日、四川省アバ・チベット族チャン族自治州●川県を震源に起きたマグニチュード8.0(中国政府発表)の内陸直下型地震。被害範囲は日本の国土の1.3倍に相当する約50万平方キロ・メートルに及び、約8万7000人が死亡・行方不明となった。多数の小中学校の校舎が倒壊し、政府発表で同省の児童・生徒の5000人以上が犠牲となった。
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