一昨年から震度6弱以上の地震が相次ぐ石川県珠洲市で、立て続けに自宅が被災した住民の約6割に再建への意欲低下がうかがえるとする調査結果を、明治大学情報コミュニケーション学部の小林秀行准教授(災害社会学)がまとめた。調査は能登半島地震の発生直前に行われており、被災者にこうした傾向が強まっている可能性がある。
同市では、2022年6月に震度6弱、23年5月に震度6強の地震があった。小林准教授は23年11~12月、2021件を対象に調査を行い、回答者のうち2回の地震で自宅に被害を受けた423人を分析した。
「何度も被災したことで、生活再建に向けた気持ちがそがれた」との質問に、63%が「とてもあった」「ややあった」と回答した。
10の選択肢でその要因を聞いたところ、59%が「災害は人間にはどうにもならない」「生活を立て直したところで、また壊されてしまう」といった無力感や徒労感を挙げた。自由回答では「公助を受けているのに立ち直れず、情けない」と自己否定する記述もあった。
このほか、22年の地震後は84%が同じ場所に住み続けたいと考えていたが、23年の2度目の地震後は74%に減少した。
同市蛸島町の女性(64)は、2回の地震で自宅のタンスが倒れ、ガラス戸が割れるなどの被害を受けた。震度6強だった能登半島地震では、自宅1階部分がつぶれ、現在は市内の仮設住宅で生活する。女性は「また被災するかもしれない。家を再建するか、今は決めることができない」と話す。
小林准教授は、「支援に対し、被災者の多くは『申し訳ない』との気持ちを抱く。被災者の心境の変化を把握し、適切な心のケアが受けられるようにする必要がある」と指摘する。
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