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Monday, July 8, 2024

息の長い支援を 被災者支援の現場で 福岡 - nhk.or.jp

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久留米の大雨災害から1年 寄り添い続けるNPOの取り組み

  • 2024年07月08日

大雨被害の現場はいま

土石流が発生した久留米市の現場

去年7月、記録的な大雨に見舞われた福岡県。久留米市では住宅3000棟あまりが浸水被害を受け、田主丸町の竹野地区では突然土石流が発生し、1人が亡くなりました。大雨から1年となる中、被災した人たちの中には住宅や仕事など生活再建が思うように進まない人もいますが、時間がたつにつれて悩みや困りごとが行政に伝わりにくくなっています。そうした声を拾い上げ、支援にあたろうと被災地を回っているNPOの活動を追いました。

1軒1軒訪ねて関係を築く

NPO「YNF」=よかたいネット福岡の吉田容豪さん

大きな石などは撤去されたものの、さら地のまま残されている竹野地区。6月はじめのある日、地区を訪れる男性がいました。被災者の生活支援を専門とする福岡市の特定NPO法人「YNF」=よかたいネット福岡のスタッフ、吉田容豪(たかひで)さんです。吉田さんのNPOではボランティアとメンバーと協力して去年から被災した人たちを1軒1軒訪ね、聞き取りなどを行っています。
 

竹野地区で住民と話す吉田さん

この日、吉田さんが訪れたのは、大きな被害を免れて今も竹野地区で暮らす住民の男性の自宅です。これまで地区の住民から聞き取った話をもとに、地域のつながりを維持するため、一度住民が集まる場を作りたいと提案し、離れた場所で暮らしている人もいるので送迎をつけたいことなどを相談しました。

竹野地区の中野さん

私たちとしては聞いてくれる人がほしいし、住民どうしでももっと話がしたいと思っています。今の調子はどう?とかちょっとしたことでかまいません。でもなかなか声がかけづらい面もあり、こうしてNPOで呼びかけてくれるのはとても助かります。

吉田容豪さん

ニーズはある一方で、時間の経過とともに支援する団体は減っていきます。戸別訪問ではどうしても会えない方、引っ越した方などもいますが、会える人で課題を持った人には解決できる・できないでふたをせずに課題に取り組んでいくという姿勢で活動しています。

丁寧な支援を続けたい

石松さんのもとを訪ねる吉田さん

数日後、吉田さんは別の地区で被災した男性のもとを訪ねました。石松宏之さん(72)は50年近く暮らした自宅が床上浸水して住めなくなったため、現在は市営住宅で避難生活を送っています。持病があって週に3回通院している石松さんにとって、パート勤務の収入と年金をあわせてもこれから自宅を再建するのは厳しい状況で、石松さんは公営住宅で暮らすことを希望していました。

20センチ以上床上浸水したという石松さんの自宅

ところが石松さんの自宅の被災の判定は「半壊」だったため、現在の市営住宅の入居期限は1年(全壊の世帯は2年)。期限が迫る中、市による聞き取りなどの支援は途絶え、途方に暮れていたところ以前暖房器具を配付してくれた吉田さんに相談しました。実は吉田さんのもとには同じような相談がほかの被災者からも寄せられていて、吉田さんが市に実情を伝えた結果、入居期限は1年延びることが決まりました。ただ、1年後には再び期限がやってきます。吉田さんは石松さんの暮らしが落ち着くまで支援を続けることにしています。
 

石松宏之さん

退去期限までに次の家が決まるか焦り、落ち着かない毎日を送っていました。困っていることを相談しただけでなく、吉田さんたちのNPOには元の自宅から避難先まで荷物を運ぶことなども手伝ってもらい、前進できて本当に感謝しています。

吉田容豪さん

大きい災害だと人も資源も集まってきますが、局所的な災害だと多くの人に関心を持ってもらうのはなかなか難しいのが現状で、ひっそりと忘れ去られているようなところがあると思います。局所的な災害に対応できないのに大きい災害に対応できるわけがないので、僕たちは局所的な災害こそ丁寧にやっていきたいと思って活動しています。

なぜ民間が支援活動?

市営住宅で暮らす石松さん


なぜ民間のNPOが今も石松さんなど被災者の支援を続けているのか。実は久留米市では自宅が全壊、大規模半壊した世帯を対象にそれぞれ担当職員をつけて聞き取りなど個別の支援を行ってきましたが、中規模半壊以下の世帯にはこうした支援はありませんでした。背景には自宅の損壊状況で支援を線引きするという現在の支援制度がありますが、たとえば被災の影響で二重のローンを抱えたり、車が水没して職場に通えず仕事ができなくなったりと、被災した人たちは家の問題だけでなく経済や労働などさまざまな面で課題を抱えています。吉田さんたちは家の損壊状況と関係なく、行政が拾い上げられないような個々の課題について聞き取り調査を行い、必要な場合は建築士や弁護士などの専門家に相談しながら支援につなげています。
ただこうした活動は県や市からの委託は受けておらず、活動にかかる費用も民間の補助金などでまかなっています。行政側からは被災者の情報が共有されないため、1軒1軒訪ねて話を聞くしかありません。こうした状況について、被災者の生活再建に詳しい専門家は次のように指摘しています。

(大阪公立大学 菅野拓准教授)
「やはり行政だけでは厳しいというのが実際だと思います。しかし、それでは民間にすべてお願いするというわけにはやはりいきません。たとえば平時の困りごとや健康状態などは行政の方々が最も情報を持っています。それを行政と民間で共有しながら一緒に考えることが必要で、協働しながらやるということが最大のポイントだと思います」。

吉田さんたちのNPOではことし1月に起きた能登半島地震の支援も行っています。こちらは石川県の委託を受けて情報を共有しながら活動しているということで、福岡でも行政と民間が連携して被災した人たちの支援にあたる体制を早急に整えてほしいと思います。

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