熊本地震４年：熊本地震 復興住宅、身を削る被災者 「食費減で回数を」「心臓病通院に自転車」 - 毎日新聞 - 毎日新聞

　「食費を切り詰めるため食事の回数を減らした」「心臓病の通院は交通費をかけず自転車で」――。2016年4月の熊本地震で自宅を失い、災害公営住宅（復興住宅）で暮らす被災者100人に生活ぶりを尋ねた毎日新聞のアンケート。地震から今月14日で4年になるが、多くの被災者が生活費の工面に苦慮し、食事などを我慢しながら爪に火をともすような暮らしを余儀なくされている。

原爆、地震…「いつか、いいことが」

　「店も家も地震で全壊しました。収入は月6万円ほどの年金ばかり……」。住宅の6割が全半壊するなど甚大な被害が出た熊本県益城町。復興住宅「宮園第1団地」の一室で米村敏男さん（92）は力なく笑った。

　県立工業学校（現県立熊本工業高）生徒の時、学徒動員されていた長崎市で被爆。「工場内にいたので助かったが、外にいたら死んでいた」。戦後は益城町で食料品店を営み多くのなじみ客に恵まれたが、リフォームして3年ほどだった自宅兼店舗ともども、地震で全てを失った。

　妻盛子（せいこ）さん（84）と町の体育館に逃げ込み、5カ月近い避難所生活をした。その後、仮設住宅に移ったが、地震の前にも入院療養した心臓病が再発。腎臓病も患い、週3回の透析治療を受けなければならない。20年1月、復興住宅に入居してからは年金をやり繰りしながら家賃や医療費を捻出する日々が続く。

現在の自宅でくつろぐ米村敏男さん（奥）と盛子さん＝熊本県益城町で2020年4月8日、津村豊和撮影

　「原爆に遭って、あんな地震にも遭うなんて。でも、生きていればいつか、いいことがあるかもしれません」。そう言い聞かせるようにつぶやく。

　同じ復興住宅団地で暮らす吉村登喜子さん（80）は地震後、夫を膵臓（すいぞう）がんで亡くした。現在は1人暮らし。自身の年金だけが生活の糧だ。「毎月の家賃が大変。光熱費もかかるから」。全壊した自宅は屋根瓦をふき替えたばかりだった。「全部無駄になった。地震さえなければねえ」。仮設住宅を出て復興住宅に移ってからは、食事の回数を減らすなど倹約の毎日だ。

新型コロナで追い打ち

　新型コロナウイルスの影響は被災者の生活再建にも及んでいる。

　同県南阿蘇村の復興住宅で暮らす自営業の男性（72）は、毎日新聞のアンケートに「震災後、客足が戻ってきた時に消費増税でまた落ちて、今はコロナ騒動で大打撃を受けている。慢性骨髄性白血病と持病の糖尿病で毎月の医療費も大きい」と回答した。

仮設離れ見守り限定的に

　熊本県によると、19年8月末までに仮設住宅を退去した1万6727世帯のうち、生活していく上で何らかの課題があるとみられる独居高齢者や低所得者などは8132世帯。仮設にいる間は自治体や社会福祉協議会が連携して見守っていたが、退去後は被災者ではなく一般住民とみなされ見守りは限定的になる。

　アンケートでは「近所に親しい人がいるか」という問いに41人が「いない」「ほとんどいない」と回答した。同県嘉島町の復興住宅の女性（66）は「これまでは朝の運動の時間にみんなに会えたが、新型コロナで開かれなくなった」と述べ、孤独感にさいなまれる。

　孤独死を恐れる1人暮らしの入居者も多かったが、その不安は現実になりつつある。熊本市の復興住宅では3月、中高年の入居者が誰にもみとられず死亡。郵便物がたまっていることに周りの住民が気づいた時は死後数日がたっていた。

　同じ復興住宅団地の女性（82）は心細げに言った。「復興住宅はマッチ箱のようなもの。中のマッチが1本ぐらいなくなっても誰も気がつかないのよ。私が死んだら誰か気づいてくれるだろうか」【山本泰久、清水晃平】

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April 11, 2020 at 08:01PM
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