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Monday, July 27, 2020

コロナ、人手不足…豪雨被災地のジレンマ 応援職員感染、ボランティア県内限定 - 毎日新聞 - 毎日新聞

日差しが照りつける中、民家の片付けをするボランティアら=熊本県球磨村で2020年7月18日、矢頭智剛撮影

 熊本県南部を中心に甚大な被害をもたらした九州豪雨は、新型コロナウイルスの感染予防を講じながら復興や避難生活を強いられる初めての災害となった。東京などで再び感染者が急増する中、被災地支援に入る他の自治体の職員らも細心の注意を求められている。コロナ対策でボランティアは県内からに限定されており、人手不足が復興の足かせになる恐れもある。

「応援なしでは人手足りぬ」

  球磨(くま)川の氾濫で市街地が広範囲に浸水した熊本県人吉市の避難所に緊張が走ったのは、避難生活が10日目に入った13日の夜だった。県外から派遣され、市内2カ所の避難所で健康チェックなどに当たっていた男性保健師の新型コロナウイルス感染が判明したのだ。

 それまで新型コロナの感染者が一人も確認されていなかった人吉市は念のため両避難所を消毒し、他の避難所も含め感染対策に不備がないか再点検。避難者同士の仕切りの高さが約1・3メートルしかなかった避難所で約2メートルの仕切りに替えるなど対応に追われた。PCR検査の結果、両避難所の避難者ら約400人は全員陰性だったが、16日には被災地を取材していた報道カメラマンの感染も判明し、県の担当者は「被災者に不安が広がっているが、一方で応援なしでは人手が足りない」とジレンマに苦しむ。

 被災自治体には今回、豪雨対応にコロナ対策という二重の負担がのしかかった。各自治体は事前に作成していたマニュアルに従って避難所で検温や手指消毒などを実施。「3密」を防ぐため収容人数も減らしたが、想定の600人を上回る800人超が一時押し寄せた人吉市最大の避難所の運営責任者は「これだけ被害が大きいと計画通りにはいかない」と打ち明ける。

 細心の注意を求められたのは応援側も同じだ。熊本県に救助隊員らを派遣した福岡県警は、従来ならば被災地近くの警察署の武道場や警察学校などで寝泊まりさせていた隊員が分散するように、屋外にテントを張らせたり、一部はバス内で「車中泊」させたりした。隊員らが乗るバスは降雨の中でも換気のため窓を開けて走行した。

段ボールで仕切られた避難所の体育館で過ごす人たち=熊本県八代市で2020年7月7日午後4時26分、徳野仁子撮影

 今のところ被災者に感染は確認されておらず、県の災害医療コーディネーターとして現地入りした笠岡俊志・熊本大教授は「避難所からノロウイルスの感染者が出た熊本地震の教訓が生かされ、感染症対策はされていたと感じた」と評価する。

 その上で笠岡教授が今後の課題として挙げたのが、孤立した集落の自宅などで避難を続ける「見えない避難者」の存在だ。これからの時期は食中毒や熱中症のリスクも高まる。2018年7月の西日本豪雨などでは、全国から派遣された保健師らが在宅避難者を回ってケアに当たったが、その保健師が地元でのコロナ対応に忙殺され、応援要員が不足していると指摘する。

 熊本県内だけでも依然として約1500人が避難所で生活している。避難生活や復旧作業の長期化が予想される中、蒲島郁夫知事はカメラマンの感染を受けた17日の記者会見で「避難所も県民も、報道関係者も、お互いに徹底的な感染防止対策を続けることが重要だ」と強調した。【山口桂子、浅野翔太郎】

作業完了まで3カ月超ペース

 4連休初日の23日、熊本県人吉市の災害ボランティアセンターには被災後最多となる約1200人のボランティアが駆けつけ、同市と、隣接する同県球磨村で民家の泥出しなどの作業に当たった。被災地の自治体は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、ボランティアの受け入れを県内在住者に限定しており、受付では検温とともに住所や健康状態などを記入するチェックリストの提出も求めた。

 「被災者は高齢者が多く、感染者が全国的に増えている状況では県内限定は仕方ない」。同県多良木(たらぎ)町から参加した団体職員、椎葉邦子さん(61)は言う。被災者の多くも県内限定に理解を示すが、一方で県内だけで被災者のニーズに応えられる人数のボランティアを確保するのが難しいのも事実だ。

主な被災地の災害ボランティアセンターへの依頼件数と作業完了状況(26日現在)

 人吉市の災害ボランティアセンターへの派遣依頼は同市と球磨村分で26日現在、約680件あるが、作業が完了したのは150件。センターによると、1日に派遣できるのは平日が30件、週末や祝日でも50件程度で、このペースだとすべて終えるのに3カ月以上かかるという。自宅が床上浸水した人吉市の女性(72)は5日に依頼したが、23日になって初めて来てもらえた。同県八代市では依頼された206件中約120件で活動を始めたが、道路事情も天候も悪く完了したのは22件にとどまる。

 熊本地震で大きな被害を受けた同県益城町の場合、地震発生から1年間で約3万6000人のボランティアが駆けつけたが約6割が県外からだった。2019年8月の豪雨で市街地が浸水した佐賀県武雄市でも、約1万人のボランティアの65%を県外者が占めた。

 こうした全国からのマンパワーに頼れない今回はどうすれば良いのか。NPO法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(東京)の明城徹也事務局長(49)は「従来のような支援ができない以上、行政や民間資源も含めて地元のリソースを最大限生かすことが大切。地域でできる限りの体制を作り、災害支援のノウハウを蓄積することが、次の災害対応力にもつながる」と語る。

 一方、重機で被災車両などを取り除く作業に携わる一般社団法人ロハス南阿蘇たすけあい(熊本県南阿蘇村)の井出順二代表理事長(47)は「特殊作業ができるボランティアは地方にはあまりいない」と悩みを吐露。感染対策をした上で専門性のある団体などに限って県外からの受け入れも検討すべきではと提言する。

 人吉市の松岡隼人市長は「医療崩壊につながりかねず、地域としてはクラスター(感染者集団)の発生だけは避けねばならない。まずは県内限定で、その後、九州の感染状況や被災者のニーズを見て(県外にも広げるか)考えたい」と話している。【城島勇人、清水晃平】

公費撤去、早期復旧に期待

 ボランティアの参加に制約がある中、熊本県が被災自治体に活用を促しているのが、宅地内に流れ込んだ土砂やがれきなどの撤去を公費で全額負担する事業だ。

民家から布団などを運び出すボランティア=熊本県球磨村で2020年7月25日午後3時55分、佐藤緑平撮影

 私有財産でもある宅地に流れ込んだ土砂などは住民自身で撤去するのが災害時の原則だが、ボランティアに頼れず撤去が進まなければ生活再建が遅れる。そこで国は、広域で甚大な被害があった西日本豪雨を機に、土砂の排除を扱う国土交通省の事業と、土砂に混在するがれきなど災害廃棄物の処理を扱う環境省の事業を同時に活用して、市町村が被災した地区ごとに一括で撤去できる仕組みを作った。

 活用するには土砂量や被災戸数などの規模要件はあるが、要件を満たせば国による補助や特別交付税により市町村の実質負担は2・5%で済む。熊本県は規模要件に満たない場合も県独自で助成することにしている。被災自治体の多くは河川や道路などの復旧に追われ、なかなか宅地にまで手が回らなかったが、八代市は孤立していた坂本町地区でいち早く4件活用。村内各地で道路が寸断され、ボランティアが入りにくい球磨村は27日に住民からの撤去申請手続きの受け付けを開始し、初日だけで20件の申請があった。

 兵庫県立大大学院の室崎益輝(よしてる)・減災復興政策研究科長は「泥が長期に残れば被災者はいつまでも救われず、感染症などの恐れもある。ボランティアが難しいのであれば、スピード感を持って片付けるのは行政の責任だ」と指摘する。【青木絵美、山本泰久】

主な災害でのボランティア人数(延べ人数)

①災害名②発生年月③活動エリア④活動人数(集計時期)

①東日本大震災②2011年3月③岩手、宮城、福島④102万人(12年3月まで)

①熊本地震②2016年4月③熊本④12万人(17年4月まで)

①九州北部豪雨②2017年7月③福岡、大分④6万人(17年10月まで)

①西日本豪雨②2018年7月③岡山、広島、愛媛④24万人(19年3月まで)

※各地の社会福祉協議会に設置された災害ボランティアセンターでの活動人数

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July 27, 2020 at 04:33PM
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