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Tuesday, January 19, 2021

阪神大震災の教訓 問われる風化を防ぐ知恵 | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞

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 6434人が犠牲となった1995年1月17日の阪神大震災から26年が経過した。2011年3月には東日本大震災が発生し、県内でも16年4月の熊本地震や昨年7月の熊本豪雨など大きな災害が相次いだが、阪神大震災の教訓は生かされているだろうか。

 阪神大震災では、全国から駆け付けた多くのボランティアが家屋の片付けや炊き出しなどに活躍。「ボランティア元年」と呼ばれた。今では他自治体からの応援職員や自衛隊と同じように、被災地の復興・復旧には欠かせない存在と認識されている。ボランティア活動を後押しする特定非営利活動促進法(NPO法)もできた。

 しかし、ボランティアに活躍してもらうための調整や連携には、まだ改善の余地がある。役立ちたいという善意と被災地のニーズを的確につなげるためにも、熊本地震で生まれた、行政と民間団体が情報共有する「火の国会議」のような仕組みをさらに進めたい。

 避難所の生活環境も、大きな災害のたびに改善が進みつつある。体育館などでの雑魚寝が当たり前だったが、段ボールベッドが普及した。間仕切りでプライバシーに配慮する重要性も理解が進んだ。

 ただ、基本的に行政が公共施設を避難所に提供し、環境整備や運営は住民主体という現在の形では不十分と指摘する専門家もいる。欧州では、国の責任で環境を整える法制度が定着している。さらに在宅避難など、指定避難所以外の被災者支援もまだ十分でない。

 一方、新型コロナウイルスの感染拡大後、国内で初めての大規模災害だった昨年7月の豪雨災害では、感染症対策という「新たな壁」が立ちふさがった。

 ボランティアの受け入れは県内に限定し、避難所運営では密集の回避に腐心。毎日の検温と手指の消毒を徹底した。幸い感染者は出なかったが、人吉市が実施した市民へのアンケートでは、コロナ禍を理由に避難所に行くのをためらった人が多かった実態も明らかになっている。

 コロナ禍は、今年の阪神大震災の追悼行事にも大きな影響を与えた。緊急事態宣言下の兵庫県では、複数の追悼行事が中止や縮小に追い込まれた。被災者や遺族の高齢化が進む中、追悼式典は記憶や教訓をつなぐ貴重な場となっていたことから、風化に拍車が掛かることが懸念されている。

 神戸市で開かれた「1・17のつどい」の参加者は約2万2千人で過去最少。被災者の交流はなくなり、犠牲者らの氏名を掲げた銘板がある地下の「瞑想[めいそう]空間」への入場は人数制限された。一方で、行事の分散やインターネット中継などが試みられた。背景には、一度中断してしまうと再開が難しくなるという危機感があった。

 3カ月後には熊本地震から5年を迎える。昨年の県主催の犠牲者追悼式は感染防止策として参列者を10分の1以下に絞り、一般献花は中止された。風化をどう防ぐかは阪神大震災と共通する課題であり、知恵と工夫が問われている。

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