2021年03月04日07時23分
東日本大震災から10年を迎える今も、心身の不調を訴える被災者が後を絶たない。精神疾患のリスクの高い人は健康調査などで浮かぶが、一見元気な人でもわずかな心の異変に気づき悪化を防ぐ必要がある。行政や専門家は背景にある孤立を防ごうと、見守りや居場所づくりに力を注いでいる。
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岩手、宮城、福島の各県で心の問題を支援する「心のケアセンター」の2019年度の相談支援件数は、岩手が7611件、宮城が5964件、福島が6157件。ピークより減ったものの、高水準が続く。内容は抑うつ気分や睡眠障害、飲酒問題など多岐にわたる。
宮城県南三陸町の社会福祉協議会は、9カ所の復興住宅に生活援助員を14人配置し、住人の見守りを続けている。計708世帯の半数以上に高齢者がおり、独居かどうかや健康状態などに合わせ頻度を変えて戸別訪問。集会所で相談に乗るなどし、心身の変化を見落とさないよう気を配る。援助員の阿部福美さん(58)は「高齢化が進み、体調の変化が出やすい」と話す。
支援の方法にも工夫を凝らす。町保健福祉課の保健師佐藤奈央子さん(49)は「震災前、自然にあった住民同士の支え合い、つながりをもう一度つくり直すことが大切だ」と指摘。援助員だけでなく隣の住人にも見守りを頼むなどしている。
福島県南相馬市の「相馬広域こころのケアセンターなごみ」では15年度から、飲酒問題などを抱える男性が月に1~2回集まり、料理を作る会を開催。米倉一磨センター長(47)は「飲酒の背景には寂しさや自己肯定感の低さがある。一つの目的のために集まる場があることで酒量が減る人もいる」と説明する。
3年前から参加する渡辺茂さん(66)は震災で仕事を失い、離婚。怒りの感情しか湧かなくなり、「なごみ」を訪れた。当時は自暴自棄になり、「いつ死んでもいいと思っていた」。スタッフに生活の不安を相談するうちに信頼関係ができ、「『渡辺さんが死んだら一番悲しむのは私たちだよ』と言われてはっとした」と振り返る。
精神状態は落ち着いてきたが、1日2食で毎日飲むといい、「食生活はめちゃくちゃ。会に参加することで唯一まともな食事ができる」と苦笑いする。今は4月までに仕事を得て生活を立て直すのが目標だ。「当時は社会とのつながりがここだけで、本当に助けられた」と話した。
岩手県こころのケアセンターの大塚耕太郎副センター長は「過酷な体験をした人の症状は長引き、10年での回復は難しい。健康問題や不安定な生活によるストレスが何度もかかり、消耗が大きい」として、継続的な支援が必要と訴えている。
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