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Sunday, June 27, 2021

10歳の時、漁船火災で父亡くす…労働局長の誓い「これ以上被災者は出さない」 - 読売新聞

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 労働災害の防止などを目的とした全国安全週間(7月1~7日)を前に、長野労働局の小野寺喜一局長(59)らが23日、長野市豊野町に建設中の災害公営住宅を視察した。10歳の時、漁師だった父を船内での火災で亡くした小野寺局長。「大切な人を失う悲しみを味わってほしくない」と安全対策の徹底を繰り返し呼びかける。

 「台風で被災し、不便な生活で苦しい思いをされている方のために働かれているだろうが、焦らず安全を確かめて仕事し、『ただいま』と帰宅してほしい」。建設現場で小野寺局長が作業員に語りかけた。

 災害公営住宅は全2棟で、工期は11月20日までの約9か月間。これまでに延べ4700人超が作業に携わった。小野寺局長はこの日、建設会社「守谷商会」(長野市)の工事所長(51)から安全対策の説明を受け、高所で作業する際に着用する転落防止用器具(安全帯)や熱中症対策が適切かどうかを確認した。「技術だけでなく、安全意識も伝承し、『ゼロ災害』で新しい住宅を引き渡してほしい」と力を込めた。

 「労災はあってはならない」。そう訴える小野寺局長が父を亡くしたのは10歳の時。父は宮城県気仙沼市出身で、遠洋マグロのはえ縄漁師だった。1972年6月、乗っていた漁船がハワイ沖で火災を起こし、海に飛び込んで命を落とした。38歳だった。

 出航すれば4~5か月は帰港しないことが多かった。亡くなったことを知った時は実感がわかなかったが、葬儀で父の同級生の弔辞を聞き、止めどなく涙があふれた。「国民の一番近くで役に立てられる」と高校卒業後の81年4月、労働行政の道に進んだ。

 労災病院を運営する独立行政法人「労働者健康安全機構」(川崎市)にも勤務し、同機構が主催する「産業殉職者 合祀ごうし 慰霊式」に参列した。労災で亡くなった遺族が、癒えることのない悲しみを抱きながら祈り続ける姿も見て、労災を根絶するとの思いを強くした。

 同労働局によると、今年1~5月の死傷者(休業4日以上)は833人で、前年同期から221人増加した。うち死者は9人に上る。建設業の死傷者は前年同期比19人増の104人(死者3人)。

 労災事故の増加を受け、小野寺局長は先月、「働く人の向こうには大切な家族や仲間がいて、たくさんの笑顔がある。これ以上の被災者を出したくない」との緊急メッセージを発表した。小野寺局長は「安全に働ける環境でなければ、どんなに賃金や環境がよくても意味がない。安心・安全が根っこだ」と語った。

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