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Sunday, November 7, 2021

豪雨被災地の視覚障害者に音声で生活再建情報…人吉のボランティア、市報朗読 - 読売新聞

taritkar.blogspot.com

 昨夏の九州豪雨で甚大な被害が出た熊本県人吉市で、朗読ボランティア団体が市の広報誌を音声で聞ける「録音図書」を作成し、被災した視覚障害者に生活再建のために必要な情報を届け続けている。メンバーの多くが被災しながらも途絶えさせなかった「声の便り」。視覚障害者からは感謝の声が上がるが、後継者育成の課題も横たわっている。(前田敏宏)

 団体は「人吉市音声訳ボランティアさくらの会」。1998年に二つの団体が合併し、現在は人吉・球磨地域の18人が所属する。市の「広報人吉」の朗読を録音してCDやカセットテープにダビングし、毎月1日に発行される広報と同時期に、人吉球磨視覚障がい者福祉協会を通じて視覚障害者のもとに届けてきた。

 だが、昨年7月4日の豪雨ではメンバーの3分の1の6人が被災。さらに、音源のダビングを担当していた協会員の自宅が濁流にのまれてパソコンなどの機器が水没してしまい、活動の継続すら危ぶまれた。

 一方、地域に暮らす視覚障害者も約30人のうち半数ほどが被災した。「災害の全容がわからず、不安な思いをしているはず。生活再建への支援策もいち早く知りたいのではないか」。自宅の被災を免れたさくらの会の木村恵子会長(71)は、何とか翌8月号の配布に録音を間に合わせようと、音声をデジタル化して複製できるソフトを自身のパソコンに入れ、県点字図書館職員の助言を受けながら使い方を習得した。

 8月号の録音図書では、市内の犠牲者が20人に上った被害の全容に加え、被災者のための支援金申請方法や応急仮設住宅の入居要件、被災家屋の公費解体に関する情報などを収録し、相談窓口も案内することができた。その後も生活再建に必要な情報を毎号届け、今年の9月号では防災ラジオを無償貸与する市の取り組みなどを紹介した。

 いずれも全盲の住吉光男さん(71)、幸子さん(72)夫婦は同県球磨村の自宅が全壊し、人吉市に移り住んだ。光男さんは防災行政無線が聞き取りづらく不安に感じていたが、防災ラジオ貸与を録音図書で知り、早期の配布を市に求めた。幸子さんは「必要な情報を確認できてありがたい」と話す。

 現在は被災したメンバーも自宅での録音を再開し、以前の活動を取り戻したが、木村会長は今後の活動に不安も抱いている。メンバーは最高齢が90歳代、大半が70歳代で、一番若い人でも60歳代後半。高齢化が進み、後継者の育成が課題となっているためだ。

 今回、パソコンなどの資機材を更新しようとクラウドファンディングで寄付を呼びかけたところ、活動内容を知った60歳代の女性が参加の意向を示してくれた。木村会長は「担い手を増やすには、機会をとらえて活動の意義ややりがいを発信していくしかない。今も仮設住宅で暮らす障害者の方がいる。災害にくじけず、情報を届け続けたい」と決意を新たにしている。

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