石巻市の石巻南浜津波復興祈念公園内の「みやぎ東日本大震災津波伝承館」に関して、県は新年度以降の展示運営の委託先を選ぶ「公募型プロポーザル」を進めている。昨年6月に開館した伝承館に対しては、震災の教訓伝承に取り組む団体などから「津波の怖さが伝わらない」といった批判が後を絶たない。委託先の再選考を機に、関係者らは展示内容の不足を補う運営面の改善を求めている。
館内では県内の被災概要や津波災害の歴史などをパネルで説明し、計約80人の語り部や被災者の証言をモニターで伝える。避難の重要性を呼び掛けるシアターもあるが、津波の生々しさを伝える内容は少ない。
県は昨年4月、震災伝承の基本方針を初めて策定。「災害時に自らの命を守る行動が実行できる社会をつくる」を基本理念に掲げた。石巻市内の伝承団体の関係者は「伝承館の展示は県の方針に沿っていない。本当に未来の命を守るための場所になれるのか」と疑念を隠さない。
伝承館では昨年7月から、県内の語り部による講話を開く。パネル展示では伝わらない津波の怖さや教訓を被災者の言葉で伝えようと、市内の民間団体が主催。年代や体験もさまざまな登壇者が被災当時を振り返り、訴え掛ける。
ただ、開催は月に2回で、多くの来館者に届けられているとは言えない。主催団体の関係者は「県が主導し、より多くの団体が伝承館で活動できる仕組みをつくるべきだ」と指摘する。
県は、伝承館が来館者の足を県内の他の被災地に向ける「ゲートウエー」となることも目指す。展示運営の委託業務には他地区の伝承施設、団体の紹介も含まれるが、現状はパンフレットを置くだけにとどまる。被害を伝える展示も被災市町ごとの犠牲者数を記したパネルのみで、地域ごとの被害の実情を伝える写真や映像は採用されなかった。
名取市の津波復興祈念資料館「閖上の記憶」代表の丹野祐子さん(53)は「展示には期待できない。せめて解説員が積極的に案内し、他の被災地にいざなってほしい」と望む。
県復興支援・伝承課の担当者は「県内の回遊性を高めるため、伝承館を中心に石巻地方や県南の伝承施設などを巡るバスツアーを新年度に実施する」と説明。「新型コロナウイルス感染収束後は館内での積極的な案内も始める」と話した。
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