2021年12月16日から17日にかけてフィリピン中部地域を襲った台風22号「ライ」(フィリピン名:オデット)は、最大瞬間風速が時速260km、中心気圧が915ヘクトパスカルに達する「スーパー台風」として強い勢力を保ったままミンダナオ島の北スリガオ州、ディナガット諸島、南レイテ州、ボホール州、セブ州、東ネグロス州、パラワン州に上陸、各地に大きな被害をもたらしました。フィリピン政府の発表によると、北半球で観測史上3番目の強さを記録したこの台風による死者は409人にのぼり、現在も13万人以上が避難生活を余儀なくされています。
明らかになった大きな被害
台風ライによる大雨、洪水、強風の被害は広範囲に複数の島々に及び、被害の全容がようやく明らかになったのは被災から数週間が経ってからでした。2月に発表されたフィリピン政府の調査報告によると、被災者は全体で1万128村落の約1080万人(約301万世帯)、現在もなお7万6907人が784カ所の避難所で暮らし、さらに5万5829人が親戚や友人の家に身を寄せています。被災した家屋は191万戸以上、そのうち全壊した家屋は約42万7000戸にのぼり、その数は2013年の台風ハイエンの被災家屋数を上回ります。また、学校や医療施設、電気・水道・通信などのインフラ、各地の空港・港や農地も甚大な被害を受け、漁業や農業で生計を立てる人びとの暮らしにも大きな影響を与えています。
ボホール島の被災状況 ©Philippine Red Cross
台風通過後のスリガオの様子 ©IFRC
現地で続く赤十字の被災者支援
今回の災害にあたり、地元のフィリピン赤十字社(以下、フィリピン赤)は台風の上陸前の12月13日にはすでにスタッフとボランティアを招集し、住民の避難誘導、捜索救助、被害調査、救援物資の配付、保健医療、給水・衛生などの救援活動を開始しました。12月16日以降は、政府やその他の機関と連携しつつ、被災者への応急手当や炊き出し、毛布や防水シート、家屋修繕のためのシェルター・ツール・キット、飲料水用容器などの救援物資の配付、倒壊した樹木の除去等の清掃活動、離れ離れになってしまった家族の連絡回復の支援、生活再建のための現金給付等を行っています。
国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は、12月18日、フィリピン赤による被災者の救援活動を支援するため2000万スイスフラン(約24億6700万円)の緊急救援アピールを発表し、日本赤十字社も、同月、緊急支援として1300万円の資金援助を行いました。
被災地では、現在もフィリピン赤を中心に連盟や各国赤十字社が協力し、さまざまな支援活動が展開されています。新型コロナ対策のため、海外からの外国人の派遣は限定的です。現地では新型コロナの感染者が増加する中、少なくとも220の医療施設が被災しており、フィリピン赤は医療スタッフを派遣し医療用テントを設営するなどして人びとの健康と命を守る医療サービスの提供を支えています。また、発災から約1カ月間に下痢等の症例が1200件以上報告されるなど、衛生環境の悪化によって感染症のリスクも高まっているため、フィリピン赤は、被災した地域の人びとへの安全な水の供給だけでなく、石けんやタオルなどの衛生用品の配付、感染対策や予防の知識の普及にも取り組み、これまでに680万リットル以上の安全な水を25万4000人以上に届け、衛生教育を16万人以上に実施しました。(写真左:発災から1カ月以上が経っても給水が必要な地域は多い ©Philippine Red Cross)
さらに、フィリピン赤の主導で、地元の大工さんと訓練を受けたボランティアが台風で倒れたココナッツの木を加工、仮設住宅の建材としても活用しています。これまでに約900人の赤十字スタッフとボランティアが活動に従事しています。
赤十字はこれからも、被災者の生活再建と災害により強い地域づくりを目指し、支援活動を継続していきます。
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