被災地でボランティア活動を続ける神戸市北区の建築士曺弘利(チョホンリ)さん(68)が、東日本大震災で大きな被害を受けた、福島県双葉町のまちの様子を描いたスケッチ集を完成させた。震災発生から11年となるのを前に現地を訪れ、同町の伊沢史朗町長らに渡す予定。曺さんは「安易に『頑張って』などとは言えないが、同じ被災者として絶対に忘れないという気持ちは伝えたい」と話している。(安福直剛)
同町は震災に伴う原発事故により、ほぼ全域が「帰還困難区域」に指定され、住民は帰宅できず役場も移転を余儀なくされた。曺さんは震災の発生後すぐに東北を訪れてボランティア活動を始めたが、同町には入れず、「遠くから見ることしかできなかった」と振り返る。
2020年1月、許可をもらってようやく町内に入ることができ、町職員の案内で歩いて回った。住民は避難したまま戻れなかったため、雑草が生い茂る住宅地周辺は荒れ果て、学校の教室をのぞくとランドセルが散乱したままだった。
このときの様子をスケッチ集「町の記憶」と題してまとめ、同年夏に贈った。今回はその続編で、B4サイズの水彩画20枚を仕上げた。
かつて行きつけの住民もいたであろう料理屋、児童の元気な声が聞こえてきそうな小学校、「緊急避難して下さい。原発事故が起きました」と書き置きが残されたままの町役場-。時間が止まったまちの姿を、心を込めて描いた。
曺さんは昨年も、双葉町をモチーフに描いた絵「復興未来図」をTシャツや手提げかばんにプリントし、同町に贈っている。
同町秘書広報課の板倉幸美さんは「何年たっても心を寄せてくださり、本当に感謝している。スケッチを見ていると、前を向いて頑張ろうという気持ちになる」と話す。板倉さんによると、描かれた建物の多くが解体されつつあるという。スケッチ集は、現地のJR双葉駅に隣接するギャラリーなどで展示予定。
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スケッチ集は、神戸市長田区二葉町5の新長田合同庁舎(21、22日)と同区若松町3の神戸コリア教育文化センター(25、26日)でも展示される。
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