2022年1月15日(現地時間)、南大洋州の島国トンガ王国の首都ヌクアロファの北約65kmに位置する海底火山「フンガトンガ・フンガハアパイ火山」で大規模な噴火が発生。噴火によって引き起こされた津波、そして降灰により、国民約10万人のうち被災者は推定8万4700人以上にのぼると報告されています(トンガ政府報告)。とくに被害が大きかったのは首都のあるトンガタプ本島の西側の海沿いの地域、海底火山の北東に位置するハアパイ諸島、そしてエウア島の西海岸沿いの一部です。
トンガ赤十字社も参加したトンガ政府の合同初期被害調査によると、466世帯の家屋が被害を受け、うち全壊した家屋は284世帯分にのぼります。また、避難所に身を寄せる住民はピーク時には約3000人でしたが、3月10日現在、ハアパイ諸島のマンゴ島やフォノイフア島、ノムカ島、コツ島といった離島からトンガタブ本島に避難してきた46家族がいまだトンガタプ本島での避難生活を続けています(トンガ政府報告)。
新型コロナ感染拡大が続く中、奮闘する赤十字スタッフとボランティア
2月1日に外国からの入国者以外で初めて新型コロナの感染者2人が確認されて以来、トンガでは新型コロナ感染の拡大が続いています。4月1日現在、新型コロナ感染者数はのべ6423人、死者6人が報告されています(WHO報告)。このような状況をうけ、トンガ政府は2月に続いて、3月20日からトンガタプ本島とババウ島諸島でロックダウン(都市封鎖)規制を指示し、同規制期間中、ガソリンスタンドなど一部を除き、ほぼ全ての経済活動の閉鎖・中止が要請されています。また、夜8時から朝5時までの夜間外出禁止令も適用されています。3月にロックダウン規制が再開され、新型コロナ感染者数は、3月28日の週は前週の2107件から1551件に減少していますが、まだ予断を許さない状況です。
離島の被災者に配離島の被災者に配付する食料セットを船に積み込む(3月15日撮影)©トンガ赤十字社
救援物資の飲み水を運ぶ赤十字ボランティア(3月15日撮影)©トンガ赤十字社
トンガ赤十字社(以下、トンガ赤)のスタッフとボランティアは、被災者の救援活動に従事するエッセンシャルワーカーとしてロックダウン下でも移動の制限が免除され、十分な感染予防対策をとりつつ、被災者への救援物資の配付などの活動を継続しています。
これまでにトンガタプ本島やハアパイ諸島の被災世帯に、食料1500世帯分、家族用テント71基、防水シート243枚、シェルター・ツール・キット66セット、毛布636枚、ソーラーランタン369個、衛生用品キット254セットなどの救援物資を配付しています(3月19日時点)。また、トンガ政府により安全な飲み水140万リットル以上が供給されるとともに、飲み水のボトル15万本以上が被災者に配付されました。トンガ赤は政府による水の供給・配付の活動サポートも実施しています。さらに、首都近くにある被災地パタンガタなど2地域では、赤十字ボランティアが簡易トイレを設置し、住民たちが利用しています。
また、トンガ語と英語で書かれたポスターを掲示して、手洗いやソーシャルディスタンスの大切さを呼びかけるなど、新型コロナの感染予防や対策のための啓発活動にも力を入れています。
日本赤十字社から6000万円の追加資金援助を決定
津波で破壊されたハアパイ諸島の家屋の様子(3月14日撮影)© Aloma J. Akau'ola/Tonga Red Cross
津波で土壌がむき出しとなったハアパイ諸島フォノイ島の様子(3月14日撮影)© Aloma J. Akau'ola/Tonga Red Cross
トンガ政府は、今回の火山噴火・津波災害の復興・レジリエンス構築のための3カ年計画(2022年~2025年)を策定し、3月、その復興計画の実施のために5億6,580万パアンガ(2億4,000万米ドル、約298億円)が必要であると発表しました。国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)でも、トンガ赤による被災者の救援・復興活動への支援を強化するため、1月に発出した250万スイスフラン(約3億1000万円)の緊急救援アピール(緊急資金援助要請)を400万スイスフラン(約5億3000万円)に増額改訂し、2024年1月までの2年間の中長期の支援を行うことが決定されています。
日本赤十字社(以下、日赤)では、1月26日から3月31日まで、連盟とトンガ赤等が実施する噴火・津波災害の救援・復興活動を支援し、同様のリスクを抱える周辺国など大洋州島しょ国の災害対策・救援物資備蓄等を行うため、「トンガ大洋州噴火津波救援金」の募集を行いました。今回、連盟の緊急救援アピールが増額改訂されることに伴い、連盟・トンガ赤と調整のうえ、早期復興支援として皆さまからお寄せいただいた同救援金から6000万円の追加資金援助を決定いたしました。この追加資金援助は、既に緊急救援として拠出した2000万円に加えて実施するものです。
さらに日赤は、連盟等との調整・協議を続け、寄せられた海外救援金を有効に活用して、今後のトンガ及び大洋州地域の島しょ国の各国赤十字社の災害対策や災害対応能力の強化に取り組んでいきます。
行動する青少年赤十字加盟校の生徒たち
日赤では、学校と連携しながら、子どもたちの中にある思いやりの心を育む「青少年赤十字(JRC: Junior Red Cross)」活動を推進しています。「気づき、考え、実行する」を合言葉に、命を大切にする「健康・安全」や、人のために尽くす「奉仕」の精神を学び、国境を越えて助け合う「国際理解・親善」を進めています。今回のトンガの噴火・津波災害では、青少年赤十字に加盟する学校の生徒の皆さんからも「トンガ大洋州噴火津波救援金」の寄付が寄せられています。
その一つ、埼玉県のさいたま市立浦和高等学校では、JRC部の生徒たちが、1月に日赤がインドネシア赤十字社と取り組むインドネシアでの地震や津波の防災について現地の人たちとのディスカッションなどを通して学び、防災の大切さを話し合っていました。その直後に今回のトンガでの災害やウクライナでの人道危機のニュースを目にし、「救援金を集めたい」と生徒や保護者に募金を呼びかけました。また、同じく青少年赤十字加盟校の一つである徳島県立脇町高等学校では、生徒会の生徒たちが主体となって、校内放送や掲示板を用いた呼びかけのほか、朝のあいさつ活動の際にも一人ひとりへの声かけを行いました。それぞれの生徒たちが、被災地や被災者の置かれている大変な状況に気づき、自分たちにできることを考え、募金集めという行動を実行してくれました。
青少年赤十字の子どもたちから寄せられたトンガや大洋州地域の人びとへの思いも日赤はしっかりと現地へ届けていきたいと思います。
日赤埼玉県支部に募金を届けたさいたま市立浦和高等学校の皆さん ©日本赤十字社
日赤徳島県支部職員に集めた募金を手渡す徳島県立脇町高等学校の皆さん ©日本赤十字社
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