能登半島地震で、被災した住民が地元から離れて避難する「広域避難」の課題が浮かび上がっている。
地震で道路が寸断され、水道などのインフラの復旧にも時間がかかる。被災地では厳しい生活が続いている。広域避難は、災害関連死を防ぐ有効な手だての一つだ。
石川県はホテルなどの「2次避難所」を約3万人分確保し、被災地から移るよう呼びかけた。しかし実際に避難した人は1月末の時点で4700人余。避難者全体の約3割にとどまる。
2次避難所の7割が県外となり、割り振り先が不確かだったり途中で移動させられたりするケースがあるなど、トラブルも相次いだ。馳浩知事は会見で「送り出し側と受け手側のマッチング、情報共有が混乱し十分ではなかった」と謝罪した。
発災当初の混乱はやむを得ないとしても、ひと月が過ぎている。体制を立て直す必要がある。「住み慣れた故郷を離れたくない」といった被災者の思いに寄り添い、きめ細かなニーズに応える相談支援のネットワークを整えたい。
まずは前提として、広域避難の先の青写真を示せるか。首長らが本腰で取り組む課題である。
避難先の自治体の連携も、被災者支援の鍵になる。信州にも5世帯8人が2次避難している。
生活環境が変わるストレスは、高齢者ほど強い。まして広域避難になると、それまでの地縁や血縁から切り離されてしまう。2次避難した後、「1人は寂しい」と被災地に帰った高齢者もいる。
集落単位の広域避難が無理なら連絡を取り合い、コミュニティーのまとまりを保つ工夫が要る。避難の時間を、被災した住民同士の復興への話し合いに充てたい。
さらに目配りが必要なのが、要介護の高齢者などの広域避難だ。自ら声を上げにくく、本人の希望が後回しにされがちになる。
医療的ケアなどが必要な900人余は、優先的に医療機関や高齢者施設に移送された。このうち2割は県外に送られている。
2次避難の前のつなぎとして金沢市に設けられた「1・5次避難所」は、避難者約300人のうち8割を65歳以上が占める。適切なケアが提供できる福祉施設などに移す調整を急ぎたい。
被災地を離れると、行政の目は届きにくくなる。避難を重ねてケアの情報共有がおろそかになっては困る。被災地の地域包括支援センターが一元的に把握するなどの仕組みが欠かせない。
からの記事と詳細 ( 〈社説〉広域避難 被災者の不安拭う体制に|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト - 信濃毎日新聞デジタル )
https://ift.tt/7c5BYIJ
No comments:
Post a Comment