2024年早々に起きた能登半島地震は、災害が様々な課題を社会に突きつけていることを改めて浮き彫りにした。課題の中で、一般的にはあまり知られていない政治的な論点がある。それは、災害後の選挙において、被災地は与党寄りになるか野党寄りになるか、という問いである。
かつての有力説では、被災地では野党の票が増える、という分析結果が示された。例えば、米国でサメの襲撃や干ばつの被害があった地域では、現職大統領が再選を目指した時の票が減る。被災者が被害を政府・与党のせいだと無意識に感じたり、政府の不十分な災害対策が露呈したりして、野党の得票が増えると考えられた。
しかし今日ではむしろ、被災地の選挙は与党有利になるという分析結果の方が多い。例えば米国では、ある州に大規模災害を宣言した大統領は、来たる選挙でその州の票が増える。逆に、州知事から大規模災害の宣言要請を受けたのにそうしなかった大統領は、次の選挙でしっぺ返しをくらう。
あるいはハリケーンの被害を受けて給付金を受けた与党支持者はより投票に出向き(従って与党の票は増え)、野党支持者は投票に行かない(ので野党の得票は減る)。ドイツでは、洪水で被害を受けて復興資金を受けた地域は与党の得票が増えた。
コロンビアでは大雨によって援助が来た地域では、与党が選挙で有利になった。なぜこうしたことが起きるかというと、災害後は被災地に対して政府から様々な支援があるため、それに被災者が恩義を感じたり、政府の対応力を評価したりして、与党を支持するからであった。
ただ分析技術の観点から言うと、これまでの研究には問題点があった。災害が起きて財政支援がもたらされた地域ほど与党票が多かったとしても、それは、もともと与党の地盤であったところで手厚い災害対応がなされたからにすぎないかもしれない。
裏を返せば、野党の票田で災害が起きても、政府はあまり助けの手を差し伸べないかもしれない。実際、米国の研究によれば、大統領と同じ政党が強い州ほど大統領による大規模災害の宣言が出されている。
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