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Sunday, February 23, 2020

心身のケア、人員足りず 台風19号「災害関連死」長野市に相談 - 中日新聞

亡くなった夫・寿男さんの遺影に手を合わせる中村さん=長野市赤沼で

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 昨年十月の台風19号災害で被災した長野市で、台風による直接の被害ではなく、被災後の生活環境の悪化や過労が原因で亡くなる「災害関連死」が疑われる相談が、市に複数件寄せられている。災害関連死を防ぐには被災者の心身のケアが必要になるが、目を配る人員は足りていない。

 床や壁がはがされた住宅の二階に置かれた仏壇には、被災後に撮影した夫の遺影が遺骨と一緒に並べられていた。「あの災害さえなければ、こんなことにはならなかったんじゃないかしら」。長野市赤沼の中村節子さん(78)は、三十年間連れ添った夫の寿男(ひさお)さん=当時(78)=との思い出を振り返り、無念がった。

 自宅は一階が浸水し、一時は避難所に身を寄せた。飼い猫を心配して自宅に戻った中村さん夫妻は、被災を免れた二階の寝室で生活を続けてきた。いわゆる在宅避難者だ。

 高血圧を患ってきた寿男さんだが、かかりつけ医も被災し、薬が手に入らなくなった。「別の病院を探したら」。中村さんが勧めても自宅の片付けを手伝うボランティアに遠慮し、足を向けなかった。片付け作業中に足をけがしたのを機に訪れた病院で高血圧の薬の処方を受けたのは、被災から二週間後だった。

 台風上陸からちょうど一カ月後の昨年十一月十二日。それまで元気だった寿男さんに異変が起きた。自宅の居間で立ち上がった直後に倒れ、搬送先の病院で三時間後に大動脈解離で息を引き取った。「あんなに急に亡くなるなんて…。最期に声をかけることもできなかった」。夫のあっけない死に、中村さんは声を詰まらせた。

 寿男さん同様に災害関連死が疑われる相談はほかにも市に寄せられてきたが、認定されたケースはまだない。市は被災前の昨年十月、災害関連死に当たるかどうかを判定する「市災害弔慰金等支給審査会」を設置したが、まだ開催されず、市福祉政策課の担当者は「二〇一九年度中にも開催したい」と話す。

 市は災害関連死を防ぐために、避難所の開設に合わせて医師や市職員による被災者のケアを進めてきた。昨年末の避難所閉鎖後も生活支援相談員が仮設住宅などを訪問してきたが、人員はわずか十六人。在宅避難者の訪問に、とても手が回りそうにない。市社会福祉協議会の海沼充地域福祉課長は「倍ぐらいの人員が欲しい」と苦しい胸中を話す。社会福祉士や保健師は在宅避難者を訪問するが、被災地以外を巡回する通常業務も抱える。

 寿男さんのもとには、被災から二週間後に保健師が訪れていた。だが、「夫が薬を手に入れるまで訪問はなかった」と中村さん。保健師が定期的に巡回していた避難所とは対照的に、目が行き届きにくい在宅避難者の現実。中村さんには「もう少し早く来てほしかった」との思いがくすぶる。「市は夫の死を災害が原因と認め、同じように亡くなる人を出さないようにしてほしい」

 (城石愛麻)

 <災害関連死> 内閣府の定義では、災害による負傷の悪化や避難生活で抱えるストレスが原因で死亡した場合が該当する。疲労による持病の悪化やエコノミークラス症候群による死亡が事例として挙がる。2016年の熊本地震では50人が震災を直接の死因とする直接死と認定されたのに対し、災害関連死は200人以上に上った。災害弔慰金支給法は、市町村に審査会設置を努力義務として規定している。

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