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Tuesday, July 28, 2020

四つもある被災者支援関係法律 分かりにくさ解消へ一本化必要 - 山陽新聞

昨年9月に新見市を襲った局地的豪雨を受け、災害ボランティアとして活動に当たった筆者

昨年9月に新見市を襲った局地的豪雨を受け、災害ボランティアとして活動に当たった筆者

 平成30年7月豪雨(西日本豪雨)から2年が経過しました。今なお、約3000人が仮設住宅で暮らされていますし、在宅被災者も多くいらっしゃいます。これからも弁護士として支援を続けていきます。

 今年も令和2年7月豪雨が起こってしまい、「『○○法』の適用となりました」という報道がよくなされました。被災者支援に関する法律は統一的な法律はなく、さまざまな被災者支援に関する法律があり、とても分かりにくいです。報道を見て、どういう意味があるのか被災者の役に立つのか混乱されている方もいらっしゃると思います。

 私もなかなか把握できるまで時間がかかりましたが、被災者や民間の支援者にとっては、「災害救助法」「被災者生活再建支援法」「特定非常災害特別措置法」と「災害弔慰金の支給等に関する法律」の適用があるかに注目すれば良いことが分かりました。時系列順にこの四つの法律をみていきます。

 発災直後、または発災中に注目すべきは、「災害救助法」が適用されるかどうかです。

 「災害救助法」が適用されれば、市町村ではなく、都道府県が救助主体になりますので、救援活動の財政的人的裏付けが格段にあがり、充実した救援活動を行うことが可能になります。また「災害救助法」に基づいて、避難所の開設、炊き出し等の食料の供与、応急仮設住宅の供与などが行われます(なお、同法の適用がなければ災害救助法に準じた救助を独自財源で自治体が行うことが多いです)。

 被災者にとっては、災害救助法の適用があれば、応急修理制度が利用できるので、半壊以上の被害を受けた場合には59万5000円までの家屋の応急修理を、準半壊(損壊割合が10%以上20%未満)の被害を受けた場合には30万円までの家屋の応急修理を災害救助法により行ってもらうことができます。

 次に紹介する「被災者生活再建支援法」では、原則として大規模半壊以上しか支援金を受けられません。これに対し、全壊や大規模半壊より圧倒的に多い場合がほとんどの半壊や準半壊の世帯が、応急修理を使えるという点でも「災害救助法」の適用の有無は重要です。

 被災前の債務を減免できる自然災害債務整理ガイドラインも、「災害救助法」の適用があれば利用できるようになります。

 次に注目すべきは「被災者生活再建支援法」の適用です。最大300万円の支援金を被災者が受け取ることができるかどうかが同法の適用にかかっていますので、被災者にとって最も重要な法律といっても良いと思います。詳しい内容は、本コラム「公的支援の大黒柱『被災者生活再建支援金』」(https://www.sanyonews.jp/article/922835)をご覧ください。

 同法は、重要な支援制度でありながら市町村内に全壊家屋が10戸以上という要件や、県内で全壊家屋が100戸以上という要件など(その他の要件もありますが)適用要件が厳しいです。災害によって適用されたりされなかったり、同じ災害でも適用される地域とされない地域があったりという同法の問題があります。この問題については、先日の岡山弁護士会の会長声明(https://www.okaben.or.jp/news/2372/)でも指摘しました。

 三つ目は、「特定非常災害特別措置法」の適用に注目してください。同法の適用があれば、(具体的措置の実施についても政令で決められますが)①運転免許のような許認可制度の期間が伸長②相続の承認又は放棄をすべき期間が伸長③応急住宅の供与期限の延長-をすることができます。さらに、同法が適用されたうえで総合法律支援法の指定もされれば、法律扶助制度により被災者は法律相談が無料で受けられることになります。

 このようにさまざまな被災者の生活に関わること、特に③応急住宅の供与期限の延長ができるかは、「特定非常災害特別措置法」の適用があることが前提なので、同法の適用は被災者にとって重要になってきます。

 特定非常災害には、阪神淡路大震災以来7例の自然災害にしか適用されていません。水害としては平成30年7月豪雨が初めての同法の適用で、岡山県や広島県選出の国会議員の方々の政府への強い働きかけがあったと聞いています。

 四つ目は、なぜかあまり報道されませんが、「災害弔慰金の支給等に関する法律」の適用にも注目してください。同法が適用されることで、災害で亡くなった方の家族に最大500万円が支給されます(重い障害を負った方には最大250万円)。

 なお、報道されることが多いですが、「激甚災害法」は「災害救助法」と異なり、基本的には、災害復興における自治体の負担を減らし、国庫負担を増やす法律です。国による特別な貸付が行われたり貸付の優遇が図られたりする点では被災者にも無関係ではないですが、被災者にとって上記四つの法律に比べれば注目すべき順序は低いと考えます。

 実は、注目すべき法律を三つに絞るつもりだったのが四つになってしまったことから、被災者支援に関する法律の数が多すぎることをあらためて実感しました。関西学院大学災害復興制度研究所が提言されている被災者支援に関する法律を統一する「被災者総合支援法案」(http://www.fukkou.net/news/20190830.html)のような法律が必要であるとあらためて考えました。

 岡山弁護士会では倉敷市真備町での平成30年7月豪雨に関する無料法律相談を真備保健福祉会館で毎月行っています。次回は8月19日13時~17時です。予約不要で無料ですので、皆さまご利用ください。今後のスケジュールは岡山弁護士会ホームページ(https://www.okaben.or.jp/active/disaster.html)でご確認ください。

 ◇

 大山知康(おおやま・ともやす)2006年から弁護士活動を始め、岡山弁護士会副会長など歴任し、17年4月から同会環境保全・災害対策委員長、18年4月から中国地方弁護士会連合会災害復興に関する委員会委員長。新見市で唯一の弁護士としても活動。市民の寄付を基にNPOなどの活動を支援する公益財団法人「みんなでつくる財団おかやま」の代表理事を20年6月まで4年間務めた。19年1月からは防災士にも登録。趣味はサッカーで、岡山湯郷ベルやファジアーノ岡山のサポーター。青山学院大国際政治経済学部卒。玉野市出身。1977年生まれ。

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