2020年7月の九州豪雨で氾濫した球磨川(熊本県)の流域市町村の仮設住宅で暮らす被災者108人に毎日新聞がアンケートしたところ、74%(80人)が「住まい再建の見通しが立たない」と答え、再建するうえでの問題点として全体の半数近くが「治水対策の不透明さ」を挙げた。支流の川辺川でのダム建設を含む球磨川流域の治水対策の行方が見通せないことが、住民の生活再建にも影を落としている。
熊本県内では5月末現在、応急仮設住宅745戸に1793人、民間住宅を借り上げたみなし仮設714戸に1613人が暮らす。毎日新聞は6月、被害が大きかった人吉、八代両市と芦北町、球磨村の応急仮設の被災者約200人に対面や手紙でアンケートを依頼し、108人から回答を得た。自宅被害の内訳は全壊60人、大規模半壊19人、半壊12人など。
住まい再建の「見通しが立った」と回答したのは23%(25人)にとどまった。見通しが立ったか立っていないかに関係なく、再建するうえでの問題点を四つの選択肢(複数回答可)を挙げて聞いたところ、「元の自宅の場所が今後も浸水しないかなど治水対策が不透明」が最多の50人で、「資金」(46人)、「高齢」(29人)、「鉄道などインフラ復旧が不透明」(18人)と続いた。「治水対策が不透明」と答えた人からは「再建するにもかさ上げがいつ終わるか分からない」(球磨村の68歳女性)などの声が寄せられた。
被災前の場所が安全かどうか見通せない中、「被災前と同じ場所での再建」を希望する人は36%(39人)で、29%(31人)が災害公営住宅(復興住宅)などの賃貸住宅入居、14%(15人)が「別の場所での再建」を希望。また、仮設住宅の入居期間が2年に限られていることを懸念し、期限延長や復興住宅の早期整備を求める声も上がった。
国は21年1月、総額約1540億円の球磨川流域の緊急治水対策を発表。川底掘削や堤防整備、宅地のかさ上げ、遊水地の整備などを29年度までに完了するとしているが、ダムは別で着工のめども立っていない。
アンケートでは川辺川でのダム建設の賛否も聞き「反対」が29人、「賛成」が21人、「どちらとも言えない」が58人だった。反対理由としては自然破壊や緊急放流への懸念、ダムの効果を疑問視する意見が目立ち、賛成する人の多くは防災効果に期待。「判断するだけの材料がない」など行政の説明不足を指摘する回答もあった。【城島勇人、山本泰久、中村園子】
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