期日前投票に訪れた有権者ら＝熱海市役所で
今回の衆院選は、頻発する災害も重要な争点。熱海市伊豆山（いずさん）の土石流災害でも、自分の声を一票に託したいと切望する被災者もいる。しかし、応急的に市外に転居した住民も多く、市内に戻っての投票が困難な人もいる。市選挙管理委員会は打開策を検討したが、人員や費用面でのハードルが高いとして特別策は講じず、期日前投票など従来通りの方法で対応している。（渡辺陽太郎、山中正義）
二〇一一年の東日本大震災などの大規模災害では、被災者の投票機会の確保は課題となった。「３・１１」の被災地では同年四月の統一地方選は軒並み、秋以降に延期。自治体が仮設住宅などを巡回して、臨時の期日前投票所を開設した事例もある。
今回の衆院選は、土石流発生から約三カ月半後に選挙戦がスタート。市によると、被災者はホテルなどでの避難生活を経て、隣接する神奈川県湯河原町などに一時的に転居した人も多い。仮に市外の転居先で転入届を出しても公選法上、今回の衆院選では静岡６区の有権者となる人がほとんど。投票日は市内の指定投票所、期日前投票も市が設けている投票所に行かなければならない。
参院静岡選挙区補選と衆院選に向け、市選管は被災者への対応を検討した。路線バスを活用した移動期日前投票所は、被災者が団地などにまとまって住んでいないとして断念。投票所までの交通費補助も議論したが、過去の県外自治体での実例を精査した結果、利用が低調だったとして見送った。担当者は「被災者の転居、避難先が決まってから選挙までの期間が短く、対応は難しかった。人員や予算の問題もあった」と明かす。
転居先を把握している人には通常は送付しないが、今回は滞在先の市区町村の選管や入院先の病院などでも投票できる不在者投票に関する書類一式も同封。ただ、知人宅に身を寄せる人らには入場券が届かないケースも想定される。担当者は「入場券がなくても投票はできる。期日前も含め、大事な一票を投じてほしい」と呼び掛けている。
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