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Wednesday, August 31, 2022

被災住宅再建トラブル 20年豪雨熊本で相次ぐ - 読売新聞オンライン

taritkar.blogspot.com

 2020年7月の九州豪雨で甚大な被害を受けた熊本県で、住宅の新築工事や修理が契約通りに行われないとの苦情が相次いでいる。工事は完了せずに仮設住宅での暮らしが長期化。業者に言われるがまま多額のローンを組み、困窮する被災者もいる。苦情は特定の2業者に対してで、少なくとも17件、契約総額は6000万円に上り、弁護団が被害実態の調査を始めた。

 「本当ならこの家に帰れたのに。1年も作業が止まったまま。許せんですよ」。仮設住宅に一人で暮らす同県球磨村のアルバイト男性(58)は憤る。豪雨から2年たった今も、自宅は壁の断熱材や天井の はり がむき出しで、修理は半分も終わっていない。床に材木が散乱し、床板さえない場所もある。

 豪雨で自宅は床上3メートルまで浸水した。全面的な修理が必要となったが、人手不足で地元の大工が見つからず、同県八代市の業者に安い金額で持ちかけられたという。被災者に入る支援金や保険金をあて、600万円で契約した。

 21年1月に始まった作業は約2か月で終わる予定だったが、台所やトイレも壊れたまま、同年8月には業者と連絡が取れなくなった。生活スペースだけでも修繕しようと考えたが、貯金を使い果たした。仮設の入居期限は約1年あるが、「何とかせんと行くところがない」とうなだれる。

 工事が終わらない中、自宅に戻った被災者もいる。同県芦北町の藤井たつ子さん(68)の自宅は床の間がある部屋には畳が入らず、ブルーシートが敷かれたままだ。豪雨で裏山の土砂が自宅に入り、仮設住宅で避難生活を続けてきた。ポストのチラシが目に留まり、同県人吉市の業者に修理を依頼。天井の張り替えなど大部分は終わったが、今年3月以降は作業が滞っている。

 藤井さんは昨年7月までに、1180万円を業者に前払いした。見積もりは900万円だったが、業者の言うままに工事は増え、費用は膨らんだ。手持ち資金が不足する中、「年金で返済できる」と業者が勧めたのが、被災者向けローンだった。用意された書類に署名をし、基準ぎりぎりの700万円近くを借りた。

 姉(71)と年金暮らしで、月に支給される約15万円から、約5万円を12年払い続ける。自宅が担保に入り、返せなければ住む家を失う。電気料金や税金は滞納がちだ。「業者を信じて借りたが、この先払っていけるのか」と不安を口にした。

 県弁護士会は7月に弁護団をつくり、救済に乗り出した。17件の支払額は1件あたり200万円から1000万円超ほど。弁護団などによると、2業者は個人経営で経営実態もはっきりしない。ともに県内に拠点を置くが過去には拠点を移しながら、東日本大震災や西日本豪雨の被災地でも営業していた。ある業者は自己破産すると弁護団に通告しており、別の業者は読売新聞の取材に対し、「財産もなく差し押さえでも何でもすればいい」と述べた。

 弁護団は返金を求める訴訟を検討中で、原彰宏団長は「被災者が犠牲になっており、看過できる状態ではない。表面化している被害は一部の可能性があり、把握して、被災者の救済に尽くしたい」と話している。

 自然災害のたび、被災地で住宅修理のトラブルが増えている。国民生活センターによると、災害で被災した住宅のトラブルは東日本大震災があった2011年度は2万5848件で飛び抜けて多い。熊本地震があった16年度は6276件、西日本豪雨に見舞われた18年度は7537件だった。

 被害に遭う年齢で最も多いのは60歳以上で7割近く。被害内容では訪問販売が6割を占める。火災保険の悪用が目立ち、「ただで修理できる」と保険会社に請求するよう持ちかけ、手数料として業者が保険金の5割を要求した例もあった。

 ある保険会社の社員は「老朽化が原因なのに、台風被害で請求した悪質な業者もいる。結局は全員の保険料が上がる」と指摘した。

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