熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流の遺族ら4人が16日、斉藤栄市長(59)を業務上過失致死の疑いで熱海署に告訴・告発状を提出した。土石流の起点となった盛り土の危険性を認識しながら長年放置し、住民の生命を守るための措置を怠ったために災害関連死を含め27人を死亡させたと主張している。未曽有の「人災」は行政のトップが訴えられる異例の事態に発展した。
告訴、告発したのは、土石流で死亡した小川徹さん=当時(71)=の弟で東京都在住の小川泉さん(68)、自宅が全壊し神奈川県湯河原町で避難生活を送っている太田滋さん(66)と、別の遺族夫妻の計4人。
告訴・告発状によると、斉藤市長は違法状態の盛り土を認識しながら、関係法令に基づき盛り土を撤去させるなどの権限を行使しなかったと指摘。発災前日に土砂災害警戒情報が発表されていたにもかかわらず、住民に盛り土の危険性を周知せず、避難指示も出さなかったとして「業務上の注意義務を怠った」と訴えている。
16日の記者会見で小川さんは「責任の所在をうやむやにしてはいけない。真相を究明することが伊豆山のためになる」と強調した。告訴を受け、斉藤市長は「詳細が不明であり、現時点でお答えできることはない。引き続き伊豆山の復旧復興に全力を尽くしたい」とコメントした。
土石流の責任追及を巡っては、別の遺族5人が昨年11月、盛り土の現旧所有者を殺人容疑で刑事告訴し、県警が捜査している。また、遺族、被災者計84人が現旧所有者らに総額58億円の損害賠償を求める訴訟を起こし、熱海市と県を提訴する方針も固めている。
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