各地で天候の不順や急変が相次ぐ。梅雨のこの時期は、豪雨がもたらす災害が毎年のように生じている。警戒と備えが欠かせない。
災害時の避難のあり方は、コロナ禍もあって、大きく変わってきた。「密」を避けるため、在宅避難や車中泊、宿泊施設の利用など「避難所外避難」も呼びかけられるようになった。
被災者が分散する分、支援を確実に届けるには、要請を待つだけでなく、個々の状況を的確に把握する必要がある。「訪問型」と言われる取り組みが求められるゆえんだ。
まもなく5年になる西日本豪雨の被災地の一つ、岡山市では、NPO法人の岡山NPOセンターなどが在宅避難者支援のための研修を重ねている。
きっかけは、発災直後に市の委託で行った被災者訪問調査だ。千五百余の世帯を訪ねたところ、2割近くで手助けが必要だと判明。罹災(りさい)証明書を自力で申請できない、各種の補助や免除に関する情報が周知されていないといった実態がわかった。
訪問調査のカギとなる人手の確保では、被災住宅で泥かきや片付けをするボランティアに協力を仰ぐ仕組みを視野に入れる。ボランティアセンターの設置・運営を担う社会福祉協議会や市などと定期協議を重ね、新たな災害への備えを急ぐ。
5年前に多くの高齢者が自宅で亡くなった岡山県倉敷市真備町では、福祉施設を運営する地元企業が被災した2階建てアパートを借り受け、「避難機能付き住宅」に改修した。2階の一室を避難場所とし、1階の入居者や近隣の住民が緊急時に身を寄せられるよう、戸外に2階へのスロープを新設した。
この部屋は普段から開放し、お茶会や体操の場にしている。「お年寄りらが遠方の避難所に行くのは大変。顔見知りになれば、誰かが声をかけてくれる」と、社長の津田由起子さん。支援が必要な人との接点が自然に生まれるようにする試みだ。
訪問支援の役割は避難時やその直後に限らない。官民が連携し、被災者の個々の事情に即して生活再建を支える「災害ケースマネジメント」を実施するうえでも重要だ。東日本大震災後の仙台市など、自治体による取り組みの広がりを受け、政府は5月末の中央防災会議で、この仕組みの整備を初めて防災基本計画に盛り込んだ。
被災地での実践を参考に、後押しの具体策を考えたい。市民団体や学者らでつくる「3・11から未来の災害復興制度を提案する会」は、災害対策基本法など関連法制の改正や財政支援を訴えている。政府と国会は議論を急いでほしい。
からの記事と詳細 ( (社説)被災者の支援 「訪問型」強化のために:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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