ないと困る「非常食」は賞味期限で選ぶべき?
災害時には、店舗が閉鎖されたり物流が滞ったりすることで食料品を入手しづらくなることも予想されます。まずは被災時に「なくて困った」非常食の体験談を紹介しましょう。「保存の効く食料。被災時は子どもを出産したばかりだったので、家事ができず、冷凍食品を使用していましたが、被災時、電気が使えなくなり冷蔵庫にあった食品をだめにしてしまいました(女性/42歳)」
「あまり記憶がないが、非常食が用意されておらず、父親が水の中を食料の買い出しに行った記憶が残っている(男性/61歳)」
「水と食品。大雪だったので水はともかくカップ麺でもあればと切実に思いました(男性/52歳)」
と切迫した読者の声がありました。
「非常食はとにかく賞味期限が長いものがよい」という考えで非常食を買ってしまうと、非常食に関する関心が薄まり、どこかにしまい込んでいつの間にか賞味期限が切れて食べられなくなっているということになりがちです。
年に2回、3月11日(東日本大震災)や9月の防災月間などを目印に家族で非常食を消費して、分量や内容を確認しておくようにしましょう。こうして入れ替えれば、非常食は賞味期限1年程度のもので十分です。
「カセットコンロ」があれば生活の質が上がる
次になくて困ったのはカセットコンロ。電気やガスが使えない状況でも、カセットコンロがあれば簡単な調理が可能です。非常時にお湯が沸かせる、調理ができるというのは生活の質に大きく影響します。インスタント食品などと一緒に、カセットコンロを確保しておきましょう。「冬だったので、お湯を沸かすことができなくて困りました(女性/40歳)」
「ガスコンロが使えず、直火調理に困った(女性/46歳)」
「カセットコンロがすぐに売りきれたから、カセットコンロで温かいものが食べられなかった(女性/48歳)」
と火を使えないことで暖かいものが食べられなくて困ったという読者の声が聞かれました。
カセットコンロだけではなく、カセットガスも家族の人数に応じて1週間程度利用できるように用意しておく必要があります。注意すべきは、カセットガスにも使用期限があること。保管場所は、湿度の低い冷暗所と覚えておきましょう。
さまざまな用途に使える「ブルーシート」
ブルーシートは、非常に多機能なアイテム。広げることで雨風を防ぐ避難所を作ったり、破損した窓ガラスや瓦の代替、急な雨からの物品保護など、さまざまな場面で活用できます。「瓦が飛んだりズレたりして、修理できるまでに時間がかかり、その間、雨が降った時にブルーシートが品薄で何処に行っても売り切れで困った(女性/64歳)」
「地震で、屋根瓦が落ちて相当割れました。瓦が補充され修理が完了するまで、約1カ月ぐらい屋根にブルーシートを張りました(男性/64歳)」
などとコメントが寄せられました。
実はブルーシートだけではなく、リングに通して止めるためのロープも必要なので、あわせて用意しておきましょう。さらに、固定したり補修したりするためにガムテープや、はがしやすく跡が残らないため重宝する養生テープ、防水強化テープなど各種そろえておくと、一時的な修理には便利です。
移動手段としての「車」
被災時の移動手段は許す限り、複数あることが重要です。その有無が生死を分けることもあります。災害時には多くの場合、移動することで二次的な被害を免れることが可能だからです。災害時の移動手段について読者からは、
「車が水没して廃車になってしまいました。家族を病院に連れて行くにも車が必要でしたが、新車を購入するにしても、地域のみんなが廃車になっているわけで注文が殺到。県の車工場も水没しており、在庫をそろえるのも大変な状況で困りました(男性/43歳)」
「ガソリンなど燃料の用意があればと後悔。どこのガソリンスタンドもいっぱいで、いろいろ用途がある車を使うのにちゅうちょして有効に使えなかった(男性/45歳)」
などとコメントが寄せられました。
注意が必要なのは、災害時は交通網が混乱するということです。また大規模災害時は道路規制が行われる可能性もありますから、車移動が可能な場合は避難経路を複数検討しておきましょう。ハザードマップなどで、リスクの高い地域を事前に確認して通らないという配慮も必要です。
ライフラインとなる「スーパー」「銭湯」なども
災害時でも食料や日用品を調達できる場所は貴重です。しかしスーパーやコンビニへの供給が滞ることも想定すれば、非常食や日用品の備蓄は欠かせません。そのため、実際には「幸い避難はせずに済んだが、お水やお米がなくなってしまったときに、スーパーも売り切れで困った(女性/51歳)」「コンビニからパンやおにぎりがどんどんなくなりました(男性/43歳)」「すぐ食べられる食料が全然売ってなかった(女性/47歳)」という声も……。
災害発生時には、その後の品不足を予測し、残念ながら「買占め」が起きることもあります。発災してから物資を入手することは基本的に難しいことをしっかりと理解して、備蓄しておくことが必要です。
また自宅が被災し、水道が使えない状況下でも、近くの銭湯を利用することができれば清潔を保つことができるでしょう。読者からは「風呂が使えないので助かった(女性/47歳)」という声がありました。
また「ガスが2カ月半止まっていたので、お風呂はもらい湯していました(女性/74歳)」なども。お風呂に困る声がありました。
災害時には断水やガスの停止で入浴できないこともよくあること。
生活用水として水道水をウォータージャグやペットボトルに備蓄しておくと、水浴や洗髪、洗濯などに利用できます。水道水は塩素が使用されているので一定期間保存が可能です(ただし冷暗所で保存し、定期的に入れ替える必要があります)。保存性を高めるために空気をなるべく入れないようにするのがコツです。
以上、被災者が「なくて困った」と感じたアイテムとその活用方法をご紹介しました。未曽有の自然災害に立ち向かうために、日頃からの備えと防災意識がいかに重要であるかを再認識しましょう。
【調査概要】
期間:2023年7月18日~2023年7月24日
有効回答数:389人(20~76歳の男女)
調査対象:All About読者
設問:被災時に「なくて困った」ものがあれば、具体的なエピソードを交えて教えてください
和田 隆昌プロフィール
感染症で生死をさまよった経験から「防災士」資格を取得。民間・個人における災害対策全般に詳しい。アウトドア、サバイバル術も得意。『今日から始める 生活防災』(ワニブックス)ほか著書、講演会、テレビなどマスミ出演多数。All About「防災」ガイド。(文:和田 隆昌(災害危機管理アドバイザー))
からの記事と詳細 ( 被災者が「なくて困った!」防災グッズとは?専門家が指摘する、備えの「盲点」も再確認 - au Webポータル )
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