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Friday, August 20, 2021

被災者の氏名 公表を原則にルール作り急げ - 読売新聞

taritkar.blogspot.com

 災害発生時に死者や行方不明者の氏名を公表することは、迅速な救命活動に直結する。国は公表を原則としたルール作りを急ぐべきだ。

 静岡県熱海市で起きた土石流災害で、県は発生の2日後、連絡がつかなかった64人の氏名を発表した。被災者の生存率が著しく下がる「発生後72時間」まで、あと半日という状況だった。

 公表後、本人らから無事を知らせる連絡が相次ぎ、翌日には不明者数が27人に絞り込まれた。氏名の公表で安否確認が進むことによって、救助隊は被災した可能性が高い人の捜索に集中できる。

 災害時に安否が分からない人らの氏名を公表するかどうかは、個人情報保護とのバランスもあり、各自治体の判断に委ねられている。このため、自治体ごとに対応が分かれ、混乱も生じてきた。

 日本新聞協会は昨年、被災者の実名を自治体が速やかに公表するよう求める要望書を国などに提出した。被災者の救命を最優先にするのは当然だ。捜索活動が一刻を争う中で、静岡県の場合、判断は適切だったと言えよう。

 2015年の関東・東北豪雨で茨城県と常総市は不明者の氏名を伏せ、人数だけを公表した。その結果、警察官らが実際には無事に避難所などにいた人まで捜索しなければならない事態を招いた。

 個人情報保護法が施行された05年以降、個人情報の開示に抑制的な風潮が広がり、自治体にも公表をためらう傾向が強まった。しかし、災害時に対応が遅れると、救える命も救えなくなることを関係機関は肝に銘じる必要がある。

 災害時の安否情報の取り扱いが自治体ごとにバラバラだった背景には、全国的な統一ルールがなかったこともある。5月に成立した改正個人情報保護法により、施行後は国が自治体の個人情報に関する運用を監督することになる。

 具体策として、国は氏名公表の指針を作成するという。自治体によって解釈が異なれば、大規模災害の際に再び混乱が生じかねない。明快で分かりやすい指針作りに努めてもらいたい。

 全国知事会は6月、災害時の氏名公表に関する考え方をまとめた。不明者については、救出活動の効率化の観点から公益性があるとした。死者についても、国民の「知る権利」に応え、教訓を後世に残す意義を挙げている。

 こうした認識を各自治体で共有してほしい。迅速で正確な情報提供は、住民の防災や減災の意識を高めることにもつながる。

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