熱海市で発生した土石流をめぐり、犠牲者の遺族や被災者など110人あまりが、市と県に対して64億円あまりの賠償を求めている裁判が始まり、市と県はいずれも争う姿勢を示しました。
去年7月に熱海市で発生した土石流の犠牲者の遺族や被災者など、あわせて110人あまりは、市と県に対し、64億円あまりの賠償を求める訴えを起こしました。
14日に静岡地方裁判所沼津支部で裁判が始まり原告側は、「熱海市は盛り土が崩落する危険性を認識していたのに適切な指導を行わず、県も市に是正を求めなかった」などと主張しました。
また「被害者の会」の会長で母親を亡くした瀬下雄史さんが意見陳述し、「行政が住民の生活と財産を守るという最大の責務を果たせず、未曽有の災害につながった責任を追及していきたい」と訴えました。これに対し熱海市側は出廷せず、提出した答弁書で、「業者が市の再三にわたる行政指導に応じなかった。県の条例の罰則が抑止力として不十分だったのが原因だ」として、訴えを退けるよう求めました。また県も、「業者への指導は熱海市の事務で、県が市に是正を求める法的な義務はなかった」として訴えを退けるよう求めました。
土石流の被害をめぐっては、これまでに遺族や被災者などが、当時の土地の所有者や今の所有者などに対して58億円あまりの賠償を求める訴えを起こしていて、裁判所は14日、1月11日に予定している非公開の協議から、市や県に対する裁判とあわせて審理することを決めました。
裁判のあと、県法務課の河合隆晴課長代理は「原告は県が持っている権限を行使しなかったことが違法だと主張をしているので、県としては法的責任を争って請求の棄却を求めるという主張をした」と述べました。
そのうえで「訴訟に至ったという遺族・被害者の気持ちは真摯に受け止めたうえで、主張すべきことはしたいと考えている」と話しました。
一方、今回の土石流をめぐって熱海市議会に設置された百条委員会は、当初、検証結果をまとめた報告書をいまの定例会に提出する方針を示していましたが、作業に時間がかかっていることから、来年2月の定例会での提出を目指すことになりました。
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