能登半島地震は5月1日で発生から4カ月。被災地では、がれき撤去に手付かずの家屋がまだ多く、今も2千人超が2次避難所で生活を送る。被災地に取り残されたペットを救おうとボランティアら有志が保護や捜索活動を続けるが、被災者の生活再建の見通しも立たない中、動物たちに命の限界が迫っている。
捕食経験なく…
津波に襲われ、甚大な被害を受けた石川県珠洲(すず)市宝立町。震災から72日目の3月12日、1階がつぶれた家屋の2階のソファの上で息絶えている猫を、片付けに戻った住民が見つけた。2軒隣で飼われていた13歳のメス「あっちゅ」で、自宅から運んだとみられるお気に入りのウサギのぬいぐるみに寄り添うように丸くなっていた。
「もう少し早ければ…」。金沢市に2次避難中の飼い主から2月末に捜索を依頼され、あっちゅを捜していた兵庫県の動物愛護団体「つかねこ動物愛護環境福祉事業部」代表の安部壮剛(もりまさ)さん(49)は、やるせない表情で話す。
乳飲み子から育てられたというあっちゅは外で食べ物を捕らえた経験もなく、飼い主が外に置いていたエサに群がる猫の中にも、その姿は確認できていなかった。屋内に散乱した生米などを食べていたとみられ、安部さんは「命のリミットが迫っている被災動物はまだまだいる」と話す。
都市部と異なる事情
安部さんは発災直後から奥能登で被災動物の捜索などの活動を継続。だが、1月2日にまず入った輪島市では「犬猫よりも人命救助が先だろ!」と怒声を浴びせられた。以後、人の支援活動を優先させ、信頼関係を築きながら取り組んでいるが、都市部と異なる地域事情は複雑だ。
現在、猫の飼育は「完全室内飼い」が推奨されているが、能登では家の中と外を自由に行き来させる「中外飼い」と呼ばれる飼い方が主流といい、1匹の猫には複数の「家」がある。集落ごと避難した地域にまだ人が戻らない中、取り残された猫を保護しても所有者の確認は難航を極める。被災地には全国から動物愛護団体や活動家が支援に入っているが、「野良猫」と判断して連れ出したことに「猫泥棒」と反発する声も聞かれた。
カンパと自腹で奔走
車中泊をしながら活動していた安部さんに救いの手を差し伸べたのが、能登町のライダーズハウス「PEACE」のオーナー、大場小都美(さとみ)さん(63)だ。
被災者に風呂や洗濯機を開放する中でペット同伴避難の悩みを聞き、「どうにかしたい」と奔走。2月下旬にはキャンプ場に10棟のインスタントハウスを設置し、同伴避難の受け入れを始めていた。1棟を安部さんの活動拠点に提供、現在は3棟のハウスで猫2匹と犬1匹が飼い主と過ごすほか、ボランティアらも宿泊に利用している。
安部さんらは能登地震の被災動物を支援しようと、有志でつくる団体「奥能登わんにゃんサポート」も設立。大場さんが代表に就き、物資を被災者に届けたり、医療措置が必要な犬や猫を病院につないだりする地道な活動を始めているが、人手は足りておらず、資金はカンパと自腹だ。
迷子の犬や猫はまだ多く、カエルなどを食べ、泥水を飲んで命をつないでいる犬猫たちには限界が迫っている。保護できたり一時的に預かったりした犬猫たちも、飼い主や世話してくれていた人がいつ戻れるのか、先の見通しは立たない。奥能登には動物病院が少ないため、緊急的な診療所の開設も模索しているという。安部さんは語る。
「能登での動物福祉と、東京や大阪のそれは違う。地域の特性を踏まえ、人と動物にとってより良いあり方を模索していきたい」(木村さやか)
からの記事と詳細 ( 孤立ペットに迫る「命のリミット」 能登地震あす4カ月 被災者の生活再建見通し立たず - 産経ニュース )
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