静岡県熱海市伊豆山(いずさん)で発生した大規模土石流災害による被災者支援につなげるため、市は被災者支援室を新設し三日、業務をスタートさせた。ハード面で復興を進める部署や、被災者らと係争中の裁判に対応するための部署も立ち上げた。(向川原悠吾)
被災者支援室は長寿介護課に設立。市は今夏に想定される警戒区域の解除後、帰還する被災者を対象にした引っ越しや家屋のリフォーム、清掃などに使ってもらう費用の支給などの窓口になる。生活再建にかかる各種申請を受け付けたり、生活相談に乗ったりするという。
同室の職員は五人。小竹洋介室長は「被災者の声を丁寧に聞きながら協力していきたい。警戒区域の解除後に本格化する復旧復興の支援にしっかり取り組みたい」と語った。
都市整備課にはライフラインや道路、宅地の復旧などを請け負う復興調整室を八人体制で設置。同課の渋谷義男復興担当専門監は市が示す復興計画に沿って進めるよう「進捗(しんちょく)のめどをしっかりと立てていきたい」と話した。
市が被災者や遺族から提訴されている民事訴訟への対応として、土地訟務管理室もまちづくり課に職員四人の態勢で発足した。
◆進まぬ復旧 住民ら不安視 「立ち入り禁止」継続 「早く元の生活に戻して」
熱海市伊豆山で発生した大規模土石流災害から三日で一年九カ月を迎えた。被災現場近くでは遺族や被災者ら二十人近くが集まり、災害関連死一人を含む犠牲者二十八人に黙とうをささげた。
市は今も被災地を立ち入り禁止の警戒区域に指定。解除の条件の一つにしている砂防えん堤は三月に完成した。もう一つの条件として、崩落した盛り土があった場所に残る不安定土砂の撤去を掲げており、作業を進める県は五月中にも終える見通しでいる。
被災地の復旧工事は警戒区域が解除されてから本格化することになっている。そのためなかなか復旧が進まない現状を不安視する被災者もいる。母親の太田和子さんを亡くした太田朋晃さん(57)は黙とう後、「被災地の景色は全く変わっていないし、いつ戻れるようになるのか。早く元の生活に戻してほしい」と訴えていた。(向川原悠吾)
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