「スペインのノーベル賞」とも呼ばれるアストゥリアス皇太子賞の今年の授賞式が28日、北部オビエドで開かれ、8部門のうち平和賞に当たる共存共栄部門で、建築を通じ世界各地の避難民や被災者への支援を続ける日本の建築家、坂茂さん(65)が受賞した。スペイン国王フェリペ6世の長女レオノール王女が賞を授与した。

坂さんは29日までに共同通信のインタビューに応じ、ロシアのウクライナ侵攻による避難民支援で来年3月にも同国西部リビウにパネル型復興住宅を試作し、各地での利用につなげる計画を進めていると語った。

坂さんは1990年代から活動を続けており、芸術部門ではない部門の受賞は「意義深い」と述べた。賞金5万ユーロ(約735万円)は「ウクライナでの住宅づくりにちょうど使える」と喜んだ。

ウクライナの避難民支援ではことし3月、ポーランドやパリに設けられた避難所にプライバシー確保に役立つ「間仕切り」システムを提供、設置した。9月末にリビウを訪れて市長と面会。住宅支援への賛同を得た。

パネル型住宅は、発泡ポリスチレンの断熱材の外側に繊維強化プラスチックを巻いたパネルを使う。調達しやすい材料で専門技術がなくても組み立てられる。「地元で生産を事業としてやってもらい、新しい雇用も生み出したい」と意気込む。

終戦後は住宅が破壊された他地域での設置も想定し、日本政府の支援も活用したいと述べた。

また中部ジトーミルに仮設の音楽ホールを建ててほしいとの依頼があり、計画を進めることを明らかにした。

一方、復興段階の建設事業には以前から原則として携わらない方針。「復興は地元の建築家が設計料をもらってやればいい仕事。(自分は)資金が出ず、特別なノウハウが必要な緊急支援を優先的に行う」と説明した。(共同)