東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島3県沿岸部の被災者の27・5%が、震災前と比べ暮らし向きが「厳しくなった」と感じていることが、河北新報社とマーケティングリサーチ会社マクロミル(東京)の共同 ...
からの記事と詳細 ( 被災者の27・5%、暮らし向き「厳しく」 コロナ禍で悪化 マクロミル社と共同調査 - 47NEWS )
https://ift.tt/Nnq9dOo
東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島3県沿岸部の被災者の27・5%が、震災前と比べ暮らし向きが「厳しくなった」と感じていることが、河北新報社とマーケティングリサーチ会社マクロミル(東京)の共同 ...
東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島3県沿岸部の被災者の27・5%が、震災前と比べ暮らし向きが「厳しくなった」と感じていることが、河北新報社とマーケティングリサーチ会社マクロミル(東京)の共同 ...
東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島3県沿岸部の被災者の27・5%が、震災前と比べ暮らし向きが「厳しくなった」と感じていることが、河北新報社とマーケティングリサーチ会社マクロミル(東京)の共同調査で分かった。2021年の前回調査から7・1ポイント上昇し、3年ぶりに悪化傾向に転じた。
今回と、同時期に実施した過去4年間の調査結果はグラフの通り。暮らし向きが「楽になった」と答えた割合は前年比1・6ポイント低下して17・5%。「変わらない」は5・5ポイント低下し55・0%だった。
3県沿岸部の非被災者の暮らし向きは「厳しくなった」が11・0%、「楽になった」が17・7%で、東北6県や首都圏を含む回答者全体は双方とも13・8%だった。被災者の方が「厳しくなった」の割合が約14~16ポイント高く、より苦境にある傾向がうかがえる。
暮らし向きのうち「仕事の確保」「住民同士の交流活動」は、被災者のそれぞれ27・2%、28・2%が「厳しくなった」と回答。新型コロナウイルス禍による地域経済の悪化や交流機会の減少が響いた。
復興事業が10年で一区切りを迎えたことから、分野ごとに被災地復興の満足度も尋ねた。被災者が「満足」「やや満足」と感じる合計は、道路や鉄道など「交通インフラ」(59・9%)が最多。高台移転や区画整理などの「住宅再建」(39・5%)「防潮堤」(38・2%)は半数に及ばなかった。
「住民同士のつながり」は20・1%、「地域経済」は19・1%と低く、除染や風評被害対策など「原発事故対応」も12・0%にとどまった。
調査を分析した東京都立大の中林一樹名誉教授(災害復興・都市防災)は「ハード復興は10年で進んだが、地域経済は復興特需を失ってコロナが追い打ちを掛けている。被災者の生活状況は非被災者よりも厳しい」と指摘する。
[調査の方法]1月28日~2月1日、マクロミル社が保有する20~70代のネットモニター1483人から回答を得た。内訳は(1)被災3県沿岸部の被災者309人(2)被災3県沿岸部の非被災者237人(3)被災3県内陸部312人(4)青森、秋田、山形3県313人(5)首都圏(東京、埼玉、千葉、神奈川1都3県)312人。被災者は住まいの全半壊や一部損壊など東日本大震災と東京電力福島第1原発事故で何らかの被害を受けた人。仙台市は宮城野、若林区を沿岸部と見なした。
東日本大震災で被害を受けた岩手、宮城、福島3県沿岸部の被災者の27・5%が、震災前と比べ暮らし向きが「厳しくなった」と感じていることが、河北新報社とマーケティングリサーチ会社マクロミル(東京)の共同 ...
東日本大震災から10年がたった今年、地方自治の現場は新型コロナウイルス感染症との闘いに引き続き追われた。少子高齢化や人口減少、地域経済の疲弊も深刻化。難局のかじ取りを担う宮城県の市町村長は地域の負託に応えているか。住民や関係者の声を交えて検証する。
「乱世の男」「有事のリーダー」。2021年8月24日、大郷町長選の告示日。田中学町長(76)の第一声で、マイクを握った応援弁士の一人がこう呼ぶと、支持者からひときわ大きな拍手が湧いた。
町長選で田中町長は無投票で当選し、通算5期目を迎えた。県内の市町村長で最高齢。喜寿を間近にしながらも、バイタリティーあふれる言動は健在だ。
大郷町が大きな被害に見舞われた19年10月の台風19号豪雨災害を巡る対応で、存在感を発揮した。発生からわずか9日後、田中町長は試案として、被災集落の移転を打ち出した。
「誰もが途方に暮れている中、いち早く『こういう方法もある』と言ってくれて、心強かった」
氾濫した吉田川に近く、大きな被害を受けた粕川地区の中粕川行政区区長を務める赤間正さん(71)が振り返る。周辺の首長の間には「人脈が豊富で、決断力と実行力はずばぬけている」との評がある。
住民説明会やアンケートなどを重ねて被災者らの要望をくみ、軌道修正する柔軟さも見せた。移転と現地再建の2本柱で被災者の生活再建を進め、町内2カ所で21年度、被災者向けの宅地造成事業に着工した。
「発想が斬新で、対応や決断が速い」。町議会の石川良彦議長(69)は田中町長の政治姿勢に一定の評価をしつつ「トップとして言動の慎重さや計画性を欠く時がある」とくぎを刺す。
町民の間には苦い記憶がある。田中町長が3期目の07年度に着手した観光施設ファームガーデン・ワールド建設事業だ。町の第三セクター「おおさと地域振興公社」と共同で事業に当たる予定だった企業が資金調達できず、09年度に中止に追い込まれた。
「失政」と田中町長は批判にさらされ、09年8月の町長選で落選。現在の支持者の間からも「見通しが甘かったと言わざるを得ない」との声が聞かれる。
「世の中は日進月歩で、何もかも計画通りに進むものではない。状況に応じて見直しをかけるのが私のスタイルだ」と田中町長は言い切る。
ただ、町議会の答弁で感情的になる場面が今も珍しくない。強引な印象は拭えず、いたずらにあつれきを生んでいる感がある。
「かつての教訓や反省が生かされているか疑問だ」。大友三男町議(66)は町が進めるドローンを活用した産業振興などの先行きに懸念を示し「公金を財源とする事業は議会や町民に透明性を示し、慎重に進めてほしい」と注文を付ける。
(富谷支局・肘井大祐)
▼外部リンク
三井住友海上・あいおいニッセイ同和損保 ニュースリリース
https://www.ms-ins.com/
●この記事に関連したニュースカテゴリ:三井住友海上
(記事提供:スーパー・アカデミー)
2022年02月27日07時18分
東日本大震災の際、避難所などに行かず自宅で生活を続けた「在宅被災者」は、11年たつ今も、修繕が終わらないなどの苦難に直面する。支援団体や専門家が連携して個別に被災状況を把握し、改善につなげる「災害ケースマネジメント」と呼ばれる新たな試みが成果を挙げており、次の災害に備え制度化を求める声も高まっている。
宮城県石巻市では、2011年3月下旬時点で約6万1000人が、避難所に入れないなどの理由で、自宅などで生活していた。同市の一般社団法人「チーム王冠」代表の伊藤健哉さん(55)は地震直後、約9000人の在宅被災者へ食料などを支援。その過程で、複雑な支援制度を活用できず思うように生活再建が進まない実態を知った。
当時の国の制度では、全壊や大規模半壊の家屋には修繕費用などとして100万~300万円が支援され、半壊世帯はトイレなど最低限の部分を直すため約52万円が支給された。しかし、資金が足りず壊れたままの家に住み続ける人や、市独自の補助を知らない人もいたという。
「支援からこぼれ落ちた人を誰も助けないのか」と感じ、11年11月から医療関係者と共に戸別訪問を始めた。住宅の損傷程度や健康状態などを丁寧に聞き取り、弁護士や建築士らと連携して解決に当たった。今も100件ほど支援を続ける。
市内に住む佐藤悦一郎さん(77)もその一人。1階が津波で浸水した自宅は大規模半壊と認定され、支援金や貯金計約300万円で修理する道を選んだ。しかし、資金が底を突き、台所床下に入り込んだ泥が残ったままだ。
チーム王冠が訪れた時、佐藤さんは月約7万円の年金に頼る生活。震災によるけがなどで医療費が膨らみ食費を切り詰めていた。伊藤さんは弁護士を紹介し、医療費の負担を役所に説明することで、生活保護申請にこぎ着けた。現在も日常の相談に乗っており、佐藤さんは「問題を一つ一つ解決してもらいありがたい。命の恩人だ」と話す。
伊藤さんらは、こうした災害ケースマネジメントの制度化を国に訴えている。国は3月末までに全国で同様の取り組み状況を調査し、課題などを探る方針。活動に携わる仙台弁護士会の宇都彰浩弁護士は「南海トラフ地震などに備えるためにも国は法制化を急ぐべきだ」と指摘している。
熱海市は二十五日、昨年七月の土石流災害で被災した伊豆山(いずさん)地区の復興計画を話し合う検討委員会の初会合を開いた=写真。復興の方針や理念を盛り込む基本計画を五月ごろ、具体的な土地利用などを示すまちづくり計画を八月ごろを目標に策定する方針を確認した。
委員会は被災町内会が推薦した代表者や学識経験者など十人で構成。委員長には被災者の高橋幸雄さん(66)=熱海市議=を選んだ。
初会合では、市が災害や基本計画の概要などを示した後、委員が意見を出し合った。「若い人たちが帰ってこられるような、新しい人が入ってこられるような町をつくってほしい」「この町を元気にするにはどうしたらいいか、住民の声を十分に聞いてほしい」などの意見が上がり、次回以降に委員以外にも、若い世代などから話を聴く場を設けることで一致した。
東日本大震災での災害復興の知見を参考にする案も上がった。市は今回の意見を踏まえて、次回以降に基本計画の素案を示す方針。高橋委員長は「意見を集約して、早く安心できるような計画をつくりたい」と述べた。会合は今後は月に一度開き、次回は三月二十五日を予定。
被災住民を対象に実施した市の調査によると、約六割の住民が将来的に伊豆山に住むことを望んでいる。(山中正義)
関連キーワード
おすすめ情報
テレビ静岡
ビジネス
熱海市で起きた土石流の被災地域の復興計画を策定するため、市が住民などから意見を聞く検討委員会が開かれました。
熱海の土石流では、関連死を含め27人が死亡、1人が行方不明で、いまだ102世帯193人が仮設住宅で生活しています。
検討委員会は学識経験者や住民など10人で構成され、被災者への意向調査では現地での生活再建を約6割の被災者が望んでいるいることが報告されました。
高橋幸雄委員長 「早くみなさんが安心する計画、やはりみなさんいつ帰れるか地元にいる人はいつ帰って来てくれるか、それが一番みなさん考えていること」
復興計画は5月中に策定する予定で、委員会は月1回程度のペースで開かれます。
チェルノブイリ原発事故の被災者を支援する団体や、放射性物質を調査する研究者らゆかりの人は、ロシアによる制圧のニュースに驚き、不安を募らせている。
市民団体「チェルノブイリ子ども基金」は、ウクライナの医療機関に薬を寄付し、毎年夏には病気の子どもの保養を支援。佐々木真理事務局長は「ウクライナ側の団体と連絡が取れない。今年は無理かも」と心配した。
福島大環境放射能研究所は、2017年にウクライナ政府と放射性物質移動の合同調査を始めた。
難波謙二所長によると、ウクライナ側の研究機関と連絡がつかず、原発30キロ圏の立ち入り制限区域内の装置は状態確認ができない。
関連キーワード
おすすめ情報
東京電力福島第1原発事故の被災者自らが写した東日本大震災前後の写真や映像を展示する企画展「福島から伝える」が、県内外5カ所で順次開かれている。1月末には浪江町の「道の駅なみえ」で初回が開かれ、3月は東京都、福島市、仙台市で予定されている。【尾崎修二】
避難区域に取り残されたペットの保護などに取り組んできたNPO法人「未来といのち」(郡山市)の主催で、企画展は4年目。帰還困難区域の浪江町津島、小丸、大堀のほか、避難指示の出ていた川俣町山木屋地区や葛尾村などを舞台に、震災前の祭りや農作業といった風景、原発事故後の荒廃や除染作業、避難指示解除後の復興の歩みなどを100枚近いパネルやビデオ映像で紹介…
広島で被爆した樹木を使ったバイオリンなどによるチャリティーコンサートが27日、広島県東広島市の東広島芸術ホールで開かれる。東日本大震災被災地を支援する仙台フィルハーモニー管弦楽団第2バイオリン副首席奏者、小川有紀子さんらが企画。小川さんは「多くの方に聴いていただき、平和の尊さを伝えていきたい」と願う。
ハナミズキ音楽事務所が主催、広島大が共催する。
バイオリンは広島大が、爆心地から370メートルにあったシダレヤナギと、死没者埋葬地のエゴノキを伐採、製材したものを部材に使用し、2019年に製作。その後ビオラとチェロも製作された。
楽器の存在を知った小川さんは、多くの人命を奪う戦災と震災に共通点を見いだし、音楽で被災者に寄り添い平和を願うコンサートを企画した。
被爆地広島復興のシンボルとなった花にちなみ、第1回「赤いカンナの花」音楽会と名付けた。
2部構成で、第1部は楽器製作を発案した広島大の嘉陽礼文研究員が講演。第2部では同大大学院教授の高旗健次さん(ビオラ)、同大客員教授の森純子さん(チェロ)が、小川さんと弦楽三重奏を披露する。トリオは同大大学院の学生たちとも共演する。
曲目はコダーイ「弦楽トリオのためのインテルメッツォ」、モーツァルト「きらきら星変奏曲」、ドボルザーク「弦楽五重奏曲第2番」ほか。
小川さんは「朽ちていく被爆樹木が楽器として、平和の大切さを伝える特別な使命を持って生まれ変わった」と、思いを語る。
「赤いカンナの花」音楽会は22年度、東北各地でも開催していく予定。収益金は、ハナミズキ音楽事務所などが設立した「赤いカンナの花基金」に寄付され、震災の被災者を支援するコンサートの費用に充てられる。
午後2時開演。入場料2000円。連絡先はハナミズキ音楽事務所070(2644)6015。
石巻人権擁護委員協議会の東日本大震災発生後の活動の様子が公益財団法人人権擁護協力会編集・発行の「人権のひろば」(3月号)に掲載される。被災者への数年間にわたる訪問や人権擁護活動などが4ページにわたって紹介される。28日に発行され、全国1万4000人の人権擁護委員らに配布されるほか、書店などでも扱うという。
自らも被災者となりながら仮設住宅の訪問、心のケアなどを続けた協議会委員の活動や、全国中学生人権作文コンテスト第36回大会で県大会最優秀賞・全国大会人権擁護局長賞を受賞した女川中3年門間瑠々さんの作品「福島県民お断り」などが紹介される。
「特集・3・11を忘れない」の中では協議会の佐々木慶一郎会長(74)の寄稿文「東日本大震災から『まだ11年』私たちの活動は続く」も掲載される。
全国で今後も発生が予想される大規模自然災害時の先進的な取り組み事例として紹介し、各地の人権擁護委員に参考にしてもらおうと取り上げられた。
佐々木会長は「間もなく震災から11年を迎える。石巻の活動が全国の人権擁護委員に知ってもらえることは大きな喜び。今後の励みにもなる」と話した。
今回の紹介を契機に佐々木会長や委員は「最大の被災地である石巻地方の人権擁護委員として、これからも被災者の『よろず相談』に耳を傾け、心情に寄り添いながら心のケアを図っていきたい」と決意を新たにしている。
悩みなどがある人は、石巻協議会(仙台法務局石巻支局内)0225(22)6188。午前8時半~午後5時。
3月11日で東日本大震災から11年を迎える。地震や津波だけでなく、東京電力福島第1原発事故の発生により、未曽有の複合災害を経験した福島県。その教訓を風化させないため、ラジオ番組での証言収録や学校での教育支援などを通して、震災の記憶と現在の福島の姿を伝えようと活動している一般社団法人「ヴォイス・オブ・フクシマ」(同県須賀川市)を取材した。【東京学芸大・中尾聖河(キャンパる編集部)】
同団体は、震災翌年の2012年に設立された。中心となったのは、ラジオ番組制作の実務に詳しい佐藤正彦さん(58)と、番組進行のパーソナリティーの経験がある久保田彩乃さん(36)。ともに福島育ちだ。
震災後、久保田さんは秋田県から福島県郡山市に帰郷。コミュニティーFM局「ココラジ」に転職し、ここで同局に勤務する佐藤さんと出会った。震災で傷ついた県土を目の当たりにして、2人は「福島のためになにかをしたい」「福島というワードが子どもたちの足かせになってほしくない」と、被災地から避難した県民を取材し、その思いを伝える活動に精力的に取り組んだ。2人はその後、原発事故で全町避難となった同県富岡町の臨時災害FM局「おだがいさまFM」の設立にも携わり、ここでも被災者・避難者の声を発信する活動を根付かせた。
活動領域を広げながら被災者・避難者の証言を集めていくうちに、久保田さんは「災害をめぐる認識が人によって異なることを実感した」と話す。だからこそ「一口に福島といっても、その中に多様性があることを伝えたい」のだという。
取材活動を拡充すべく、2人はラジオの仕事を続ける傍ら、同団体設立に踏み切った。集めた証言は「Voice of Fukushima」という番組として「ココラジ」を皮切りに各地の放送局で放送を開始した。番組はインタビュー形式で証言者の生の声を伝え、福島県に関わりのあるゲストが登場する。「自分の言葉で、被災の記憶や今の思いを自然に話してほしいので、細かい編集はしない」と佐藤さん。同じ福島県民として、県民の目線を大事に番組制作を行っているという。週1回、5分間の放送は現在、全国8局ネットで放送されており、21年2月には放送400回を迎えた。
震災発生時、「ココラジ」内にいた佐藤さんは、連日自宅に帰らずラジオ放送を続けた。「今回の震災の経験を次の震災に生かせなければ、私たちはただ悲しみに暮れただけになってしまう」。佐藤さんは久保田さんら仲間とともに、震災の教訓を生かして避難所の状況などを改善するために、これからも取材を続けていきたいと話す。
14年には、ラジオ放送だけでなく、教育支援にも携わり始めた。舞台は、富岡町が町民の避難先となった同県三春町に11年9月に設けた富岡町立幼小中学校の三春校。取材で訪れたことをきっかけに、月に6時間ほどの総合学習の授業を始めた。18年の「おだがいさまFM」閉局までは、児童自身がテーマを考え、決めた内容で番組を制作し、同局で放送していた。その後、三春校が22年3月に閉校することが決定。18年以降は、三春校の記録を映像で残す取り組みを授業として行っている。
震災後しばらくは、メディアの取材を受けた経験のある児童生徒が多く、「取材されるのは慣れていたけれど、取材するのは初めてだった」と話す子どももいたという。避難を経験し、特殊な環境に身を置いてきた子どもたち。久保田さんは授業を行う中で、「空気を読んで大人が求める上手な答えを話すのではなく、考えて考えて、自分なりに答えを出してもらうことを大切にしてきた」と話す。
一方で、現在10人いる児童生徒には震災前の富岡町の記憶はほとんどない。映像を制作するにあたって、子どもたちは町民に取材を行い、富岡町の歴史や学校の成り立ちについて学ぶ機会となっている。
これまでの取り組みを踏まえて今後何をすべきか。久保田さんは「後の時代に残したいという思いを持って語る側から、受け取る側である次世代へと、どういった興味・関心で記憶をつないでいくことができるか、考え続けている」と話す。記憶を継承していくために「個々の声を集めて集合体にし、後々利用できるよう分類、保存していきたい」と、これまで収録した膨大な証言記録のアーカイブ化にも取り組み始めている。
長い時間をかけて取り組んできたからこそ、震災直後に取材した声と、現在の声との変化を追っていくこともテーマだ。「自分にとって震災が何だったのか、震災を踏まえてこれからどうしていきたいのか」、取材する中で、各人の変化を感じながら発信していきたいと佐藤さんは語る。
現在、同団体のメンバーは5人。軸をぶらすことなく地域に根を張った活動を続けている。佐藤さんは「団体を続けようとしているのではなく、個々の福島への思いを団体に持ち込んでいるから続いている」と話す。自治体や国の被災地復興支援事業が先細りとなる中、団体としては「これまでの10年よりもこれからの10年が踏ん張り時」という。地域への思いを絶やすことなく、次世代へと記憶をつないでいく活動はこれからも続いていく。
太平洋沿岸部に甚大な被害を及ぼした東日本大震災から3月11日で、11年となる。宮城県の村井嘉浩知事は22日、復興の軌跡をめぐり産経新聞などのインタビューに応じ、施設整備の復旧に一定の手応えを示しつつ、被災者に寄り添いながら、災害の恐ろしさを伝承していく必要性を重ねて強調した。一方、マスコミ報道については苦言も呈した。主なやり取りは以下の通り。(奥原慎平)
◇
--県内の復興状況は
「ハード面ではあと1年あれば、すべて完了できる所まで至った。県の震災関連予算も、一時は1兆円近い規模だったが、令和4年度は300億円規模におさまった。ただ、心のケアを必要とする人がたくさんいるのは事実。これからは、心のケアやコミュニティーの再生など一人一人に寄り添ったソフト対策に力をいれたい」
--沿岸部は人口減に直面している
「減り幅を小さくしたいが、定住人口の減少は抑えられない。これは無理ですよね。日本全体の人口が減る中で、被災地だけ増えるのは考えにくい。なので、にぎわいを取り戻すには交流人口の創出が重要となる。定住人口対策と交流人口対策を組み合わせ、少しでも活気を維持したい」
--復興の伝承について
「災害教育として子供たちに伝えていくのは非常に重要だ。震災以降に生まれた子供や当時赤ちゃんだった子はユーチューブなどでみるしかないが、あの時の恐ろしさはなかなか伝わらないだろう。例えば(発災直後)現地に行くと、モノが腐ったり、魚が腐ったり、独特のにおいがした。そういったことも震災を経験していない子供たちが、自分の言葉でしゃべられるようにしていくのは非常に重要なことだ」
--その理由を改めて
「何かあったときに次に命をつなげるためだ。パンフレットや映像を見せて『はい、終わり』ではない。『津波てんでんこ』という言葉のように、避難訓練で体に覚えこませ、津波警報が鳴ったらすぐに逃げるようにしないといけない。それは今のわれわれの大きな責任だ」
--知事が考える復興の定義とは
「震災前の状態に戻すことが復興ではないのだろう。元に戻す復興ではなく、人口減を見据えたまちづくりが必要ではないかと思い、やってきた。10年、15年、さらに先を見据えたまちづくりや制度設計をすることが復興だ。震災と同じような災害があった際、命が助かるようなまちづくりも必要だ」
--知事が考える復興の完了とは
「それは被災者によって変わると思う。どこが終わりかはいえない。誰も決められない」
--「3・11」をめぐるマスコミの報道について
「『3・11』だけでいいのかという気はする。仕方がないのだろうが。こういった問題は被災者の目線で考えないといけない。一過性の報道で終われば、被災者がかわいそうだ」
「ただ、全体を見た上で判断してほしい。行政のトップとして言わせてもらうと、(マスコミは一部の)被災者の目線でばかり、物事をみる傾向がある。被災者が言ったことが全てのように。行政の目線が完全に抜けていることもある」
「津波対策の防潮堤の問題でも『ない方がいい』という人の声だけを拾う。なぜ防潮堤をわれわれが作ろうとしたのか、一気に整備したのか。正しかったという報道はせずに、『必要なかった』という一部の声だけを捉える。声の大きい、小さな人の集まりを捉えるのはマスコミの特性なんだよね。職員は一生懸命やっているのに。さも悪いことをしたかのように言われることもある。悔しい思いだよ」
被災地でボランティア活動を続ける神戸市北区の建築士曺弘利(チョホンリ)さん(68)が、東日本大震災で大きな被害を受けた、福島県双葉町のまちの様子を描いたスケッチ集を完成させた。震災発生から11年となるのを前に現地を訪れ、同町の伊沢史朗町長らに渡す予定。曺さんは「安易に『頑張って』などとは言えないが、同じ被災者として絶対に忘れないという気持ちは伝えたい」と話している。(安福直剛)
同町は震災に伴う原発事故により、ほぼ全域が「帰還困難区域」に指定され、住民は帰宅できず役場も移転を余儀なくされた。曺さんは震災の発生後すぐに東北を訪れてボランティア活動を始めたが、同町には入れず、「遠くから見ることしかできなかった」と振り返る。
2020年1月、許可をもらってようやく町内に入ることができ、町職員の案内で歩いて回った。住民は避難したまま戻れなかったため、雑草が生い茂る住宅地周辺は荒れ果て、学校の教室をのぞくとランドセルが散乱したままだった。
このときの様子をスケッチ集「町の記憶」と題してまとめ、同年夏に贈った。今回はその続編で、B4サイズの水彩画20枚を仕上げた。
かつて行きつけの住民もいたであろう料理屋、児童の元気な声が聞こえてきそうな小学校、「緊急避難して下さい。原発事故が起きました」と書き置きが残されたままの町役場-。時間が止まったまちの姿を、心を込めて描いた。
曺さんは昨年も、双葉町をモチーフに描いた絵「復興未来図」をTシャツや手提げかばんにプリントし、同町に贈っている。
同町秘書広報課の板倉幸美さんは「何年たっても心を寄せてくださり、本当に感謝している。スケッチを見ていると、前を向いて頑張ろうという気持ちになる」と話す。板倉さんによると、描かれた建物の多くが解体されつつあるという。スケッチ集は、現地のJR双葉駅に隣接するギャラリーなどで展示予定。
◇
スケッチ集は、神戸市長田区二葉町5の新長田合同庁舎(21、22日)と同区若松町3の神戸コリア教育文化センター(25、26日)でも展示される。
2021年12月16日から17日にかけてフィリピン中部地域を襲った台風22号「ライ」(フィリピン名:オデット)は、最大瞬間風速が時速260km、中心気圧が915ヘクトパスカルに達する「スーパー台風」として強い勢力を保ったままミンダナオ島の北スリガオ州、ディナガット諸島、南レイテ州、ボホール州、セブ州、東ネグロス州、パラワン州に上陸、各地に大きな被害をもたらしました。フィリピン政府の発表によると、北半球で観測史上3番目の強さを記録したこの台風による死者は409人にのぼり、現在も13万人以上が避難生活を余儀なくされています。
台風ライによる大雨、洪水、強風の被害は広範囲に複数の島々に及び、被害の全容がようやく明らかになったのは被災から数週間が経ってからでした。2月に発表されたフィリピン政府の調査報告によると、被災者は全体で1万128村落の約1080万人(約301万世帯)、現在もなお7万6907人が784カ所の避難所で暮らし、さらに5万5829人が親戚や友人の家に身を寄せています。被災した家屋は191万戸以上、そのうち全壊した家屋は約42万7000戸にのぼり、その数は2013年の台風ハイエンの被災家屋数を上回ります。また、学校や医療施設、電気・水道・通信などのインフラ、各地の空港・港や農地も甚大な被害を受け、漁業や農業で生計を立てる人びとの暮らしにも大きな影響を与えています。
ボホール島の被災状況 ©Philippine Red Cross
台風通過後のスリガオの様子 ©IFRC
今回の災害にあたり、地元のフィリピン赤十字社(以下、フィリピン赤)は台風の上陸前の12月13日にはすでにスタッフとボランティアを招集し、住民の避難誘導、捜索救助、被害調査、救援物資の配付、保健医療、給水・衛生などの救援活動を開始しました。12月16日以降は、政府やその他の機関と連携しつつ、被災者への応急手当や炊き出し、毛布や防水シート、家屋修繕のためのシェルター・ツール・キット、飲料水用容器などの救援物資の配付、倒壊した樹木の除去等の清掃活動、離れ離れになってしまった家族の連絡回復の支援、生活再建のための現金給付等を行っています。
国際赤十字・赤新月社連盟(以下、連盟)は、12月18日、フィリピン赤による被災者の救援活動を支援するため2000万スイスフラン(約24億6700万円)の緊急救援アピールを発表し、日本赤十字社も、同月、緊急支援として1300万円の資金援助を行いました。
被災地では、現在もフィリピン赤を中心に連盟や各国赤十字社が協力し、さまざまな支援活動が展開されています。新型コロナ対策のため、海外からの外国人の派遣は限定的です。現地では新型コロナの感染者が増加する中、少なくとも220の医療施設が被災しており、フィリピン赤は医療スタッフを派遣し医療用テントを設営するなどして人びとの健康と命を守る医療サービスの提供を支えています。また、発災から約1カ月間に下痢等の症例が1200件以上報告されるなど、衛生環境の悪化によって感染症のリスクも高まっているため、フィリピン赤は、被災した地域の人びとへの安全な水の供給だけでなく、石けんやタオルなどの衛生用品の配付、感染対策や予防の知識の普及にも取り組み、これまでに680万リットル以上の安全な水を25万4000人以上に届け、衛生教育を16万人以上に実施しました。(写真左:発災から1カ月以上が経っても給水が必要な地域は多い ©Philippine Red Cross)
さらに、フィリピン赤の主導で、地元の大工さんと訓練を受けたボランティアが台風で倒れたココナッツの木を加工、仮設住宅の建材としても活用しています。これまでに約900人の赤十字スタッフとボランティアが活動に従事しています。
赤十字はこれからも、被災者の生活再建と災害により強い地域づくりを目指し、支援活動を継続していきます。
2022年2月19日(土)
東日本大震災から11年を控え、日本共産党の志位和夫委員長は18日、岩手県の達増拓也知事、同県陸前高田市の戸羽太市長とオンラインで会談し、復興の現状や課題、要望について聞きました。
|
|
|
志位氏は、「知事は、『被災者の幸福追求権を保障する』という憲法13条の立場で被災者の苦しみに心を寄せる対応をしてこられた」と敬意を表明。被災者の医療費・介護保険利用料の減免を昨年12月末まで続けたのは「金字塔と言うべき仕事です。これを国の制度とする方向で生かしたい」と述べました。
達増氏は、震災から11年が経過するも、被災者の心身の健康を守る「県こころのケアセンター」への相談件数がいまだに多いと指摘。「専門家は『心のケアを縮小すべきエビデンス(証拠)はない』と言います。時間で区切る課題ではなく現場の実態に合わせたケアが必要です」と要望しました。
志位氏が、心のケアの予算を削っている県もあるとして、岩手県の現状を質問すると、達増氏は、「心のケアはやらないといけないので、人員や予算を減らすことは考えていない」と述べ、スタッフ約50人を確保するなど十分な相談体制を維持していると説明しました。
志位氏は、被災者に寄り添って心のケアに取り組む県の姿勢に敬意を表したうえで、「期限を設けず、解決するまで中長期的に国が支援するよう求めていきます」と応じました。
日本共産党の岩渕友参院議員も「被災者に寄り添った支援を心強く思う。岩手県の取り組みは他の災害でも参考になる」と述べました。
「主要魚種の水揚げ量の激減や、新型コロナウイルスの流行による消費の落ち込みが復興に大きな影を落としている」と地域経済の苦境を訴える達増氏。志位氏が国として実施すべき漁業支援について尋ねると達増氏は、東北は養殖に適した環境だとして、「魚種の転換への支援とともに、育てる漁業が軌道に乗れば収入が安定する。育てる漁業へのシフトに国も主導的に取り組んでほしい」と指摘。志位氏は、「最新の科学的な知見を集めて水産業の苦境を打開するとりくみを求めていきたい。養殖事業に十分な予算をつけるよう国に提起していきます」と強調しました。
最後に「岩手県は、市民と野党の共闘の発祥の地の一つであり、知事と一貫して肩を組んでやってこられてうれしく思います。今度の参院選でも共闘を発展させるために力を合わせていきたい」と志位氏。達増氏は、2015年の岩手県知事選の支援で盛岡市に集まった志位氏も含む野党5党首のサインを「宝物にしている」と述べ、「この枠組みを大事にしたい」と応じました。
養殖業をはじめとする水産業が主要産業である陸前高田市。戸羽市長は、最大の問題として、高濃度の放射性物質トリチウムを含むアルプス処理水(汚染水)の海洋放出を挙げました。
戸羽市長への政府の回答によると、海洋放出についての説明会を全国で500カ所行ってきたものの、岩手県で実施したのは2カ所のみです。市長は「福島をメインでやっていると思うが、岩手県の漁業者も同じ被害を受けている。まずは説明して、漁業者も含めて解決するべきです」と語気を強め、住民にまともに説明しない政府の姿勢を批判しました。
また市長は、文部科学省が全国の小中学校や高校に配布している「放射線副読本」に政府が作成した汚染水を「安全処分する」などと書かれたチラシが入っていた問題に言及。県内被災自治体でつくる「岩手三陸連携会議」では配布の中止で一致したと紹介しました。
志位氏は、「沿岸地域全体の問題であるのに、まともな説明がないのは議論以前の問題です。政府の姿勢をただしていきます」と強調。さらにトリチウムの分離は理論的に可能だとして、「海洋放出に代わる新たな処理・保管方法を、国が科学的な英知を結集して取り組む姿勢が重要です」として、海洋放出は認めないという立場で頑張ると表明しました。
「三陸沿岸では漁業が苦戦すると観光も全部だめになる。第1次産業を立て直すことが、われわれの生命線です」と訴える戸羽市長。以前から課題となっている貝毒の発生も原因が特定できないため進展がないとして、「国も本腰を入れて対応してほしい」と要望。さらに「人口減少も課題です。陸前高田市も国勢調査では2万3000人でしたが、1万8000人を割る状況となり、このままでは日本がなくなります。30年後の日本をどうするのかという国のビジョンがなく、未来に向けた方向づけがほしい」と切実に語りました。
志位氏は、「日本はヨーロッパと比べて農業に対する補助があまりに少ない。価格保障や所得補償を抜本的に充実させて、食料自給率37%という状況を大転換しなければなりません。市長の話を受け止めて、私たちもさらに力を入れたい」と応じました。
また志位氏は、復興庁関連予算が大震災から10年目の1兆4024億円から直近では5790億円へと減少し、被災者支援交付金が減らされている問題があると指摘。戸羽市長は、復興庁職員が自治体とともに課題を解決する必要があるとして、復興庁の役割を抜本的に見直すよう提案しました。志位氏も、「岸田文雄首相は『聞く耳を持っている』と言っています。当然の道理ある方向なので、復興予算の増額と復興庁のあり方の見直しを一体に求めていきたい」と語りました。
佐賀県内外の住民ら1万人以上が、国や九州電力に玄海原発(東松浦郡玄海町)の全基の操業停止を求めている訴訟の第38回口頭弁論が18日、佐賀地裁(三井教匡裁判長)で開かれた。2011年3月の東日本大震災で被災した福島県の今野秀則さんが「原発事故で大切な生活が突然奪われた」などと意見陳述した。
今野さんは東日本大震災が起きた際、福島県浪江町津島地区に住んでいたといい、福島原発事故の影響で地区の全域が「帰還困難区域」となった。現在も県内の別の場所で避難生活を余儀なくされているとし「私たちには何の罪もなく、理不尽で不条理」と訴えた。
原発事故直後の避難所について「足の踏み場がないほどの混雑。騒然とした雰囲気と底知れぬ不安に包まれた」と述べた。
「原発なくそう! 九州玄海訴訟」原告団(長谷川照団長)が提訴している。
県が策定を進める第5期南海トラフ地震対策行動計画(2022~24年度)に、被災者の生活再建を個別に支援する「災害ケースマネジメント」の仕組みが盛り込まれることになった。既存の支援制度から漏れる被災者を救う狙いがある。県は新年度、東日本大震災(11年)や鳥取県中部地震(16年)での実践例を参考に検討を始める。(古谷禎一)
被災者の生活再建は、阪神大震災(1995年)で課題となり、98年に被災者生活再建支援法が成立。同支援制度では住宅が全壊した場合、最高300万円が支給される。その後の改正で、中規模半壊(損害割合30%台)以上が対象となったが、一部損壊や店舗の被災などには支給されない。
被災者の状況は、体調を崩したり仕事を失ったりと一人一人違ってくるため、住宅の被害だけで画一的に判断するのではなく、個々の状況に応じた支援制度の必要性が指摘されてきた。また、被災者が既存の制度を知らないために申請ができず、支援から取り残されるケースもあった。
災害ケースマネジメントは、2005年にハリケーン「カトリーナ」で大きな被害が出た米国で導入。東日本大震災で仙台市や宮城県石巻市、鳥取県中部地震では鳥取県が取り入れた。
鳥取県では地震発生から1年半が過ぎても屋根にブルーシートがかかったままの被災者宅を、自治体職員らが訪問。修繕資金の不足や健康面の不安などを聞き取り、関係機関と個別の「生活復興プラン」を作成した。建築士が低料金での修繕方法を提案したり、保健師が健康相談に応じたりと専門家らの支援につなげた。
県南海トラフ地震対策課では「生活再建を進めるには行政からの働きかけが欠かせない。個々の被災状況や困りごとを把握していく仕組みをまずつくりたい」としている。
津久井進・前日本弁護士連合会災害復興支援委員会委員長の話「災害後の時間の経過とともに、生活再建の進み具合に差が出てきて一律の支援では難しくなる。個別の困りごと、ニーズを把握する仕組みが必要で、介護保険制度の災害版と言える。南海トラフ地震に備える高知が導入することで、全国への波及効果も大きい」
佐賀新聞など地方紙46紙と共同通信社が地域活性化に取り組む団体を支援する「第12回地域再生大賞」で、佐賀県内から優秀賞に選ばれた「おもやい」(武雄市)に表彰状が届いた。
おもやいは2019年8月の佐賀豪雨をきっかけに武雄市民とボランティアが声を掛け合って結成し、同市や大町町の被災者支援を手掛けてきた。当初は30年に1度の災害との認識だったが、昨年8月の記録的大雨で同じ地域が再び被災。活動は今も続いている。
住宅の再建から食事の援助、行政に対する各種手続きの手伝い、将来への不安を口にする人の相談相手など、物心両面から支援している。おもやいの鈴木隆太代表は「活動が注目されたことは大変ありがたい。被災者と一緒に努力してきた結果だと受け止めている」と話す。
現在は非常食も含めた防災安心セットの配布や、段ボールトイレの作り方のアドバイスなど次の雨期への備えに取り組んでいる。スタッフたちは「これ以上、地域の人たちの笑顔を失いたくない」と、思いを一つに活動している。
大賞には中高生に家庭でも学校でもない第三の居場所を提供する「河原かわら部社べしゃ」(山梨県韮崎市)が選ばれた。新型コロナウイルスの感染状況を踏まえ、東京での表彰式の開催は見送られた。(澤登滋)
テレビ静岡
ビジネス
土石流災害からの復旧・復興に約10億円を計上する方針です。
静岡県熱海市の新年度当初予算案は一般会計で196億5000万円となり、このうち5.1%にあたる約10億円を土石流災害の復旧・復興に充てる考えです。
これには復興まちづくり計画の策定や被災者の見守り、それに逢初川の両側に再整備する市道用地の買収などの費用が含まれています。
熱海市は今年度中をめどに復興に向けた基本計画を策定する方針です。
熱海市は15日、2022年度当初予算案を発表した。一般会計は前年度比9・2%増の196億5400万円。大規模土石流に見舞われた伊豆山地区の復旧復興と、地域経済に大打撃を与えている新型コロナ禍対策に重点を置いた。特別、公営企業会計を含めた総額は4・7%増の382億7400万円。
土石流関連の予算は計10億900万円で、一般会計の5・1%を占めた。被災地の土地利用方針などを示す復興まちづくり計画と実施計画の一部策定に7600万円を充てた。斉藤栄市長は同日の記者会見で、復興の理念などを定める基本計画について「21年度中の策定が目標だが、住民の声を反映させなければいけない」と述べ、意見交換の場を設ける考えを示した。
逢初(あいぞめ)川沿いの市道整備や用地購入には3億800万円を計上。市道は川の両岸に整備する予定で、県の河川改修と同時期に行う。災害廃棄物の処分や公費解体する建物の撤去などに4億400万円を充てた。被災事業者、漁業者向けの県や国の補助制度を補うため、自己負担分の一部支援に5200万円を計上した。
コロナ禍の経済対策では、個人客向けに行っていた従来の観光プロモーションの対象に企業を加え、ワーケーションなどを促す取り組みに1500万円、中京や関西圏からの誘客に600万円、花火大会の追加開催に1千万円を充てた。
歳入は、柱の市税が89億8千万円(6・4%増)。市の貯金に当たる財政調整基金から15億8700万円を取り崩す。同基金の22年度現在高は23億9700万円になる見込み。
■記者の目/市民巻き込んで一歩ずつ
熱海市の予算編成は例年、産業振興、教育福祉、住民生活の三つを施策の柱に据えられてきた。15日発表の2022年度当初予算案は伊豆山の復旧復興と、コロナ禍対策に重点が絞られた。メリハリの効いた予算編成と言える。同時に、市が直面している課題の深刻さを物語っている。
復興に向けた計画の策定作業は、当初の予定より遅れている。被災者の思いを丁寧にくみ取りつつ、スピード感が求められる極めて難しい仕事であることは確かだ。それでも「早く伊豆山に戻りたい」と願う被災者に少しでも早く希望を提示してほしい。
土石流と長引くコロナ禍の影響で、斉藤栄市長が昨年掲げた「反転攻勢」は思うように進まなかった。22年度は「ゼロ」ではなく「マイナス」から出発せざるを得ない。華々しく攻勢に打って出るのはまだ先になるだろう。今は市民を巻き込んで次の一歩を着実に進んでほしい。